下痢
“下痢”とは、便の水分量が増して泥状〜水様になった状態をいいます。多くの場合、排便の回数も増えてきます。下痢はいろいろの原因で起こります。急激に下痢が起こったときは、感染症、食中毒のことがあります。多くの感染症は数日で自然に改善することが多いのですが、その間脱水にならないように注意する必要があります。脱水になると体力のない小児や高齢者は全身状態が悪化することがあります。下痢で失った水分は補うには点滴が一番よいのですが、とりあえずうすい食塩水やこれにブドウ糖を加えたもの(経口補水液)を飲むことでも対応可能です。安易な下痢止めは症状を悪化させたり、長引かせたりすることもあるので、おすすめできません。
また慢性にだらだらと下痢が続く場合には、過敏性腸症候群のことが多いのですが、中には潰瘍性大腸炎、クローン病など難病に指定されている重大な病気がかくれていることもあります。こちらも一度大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。
便秘症
厚生労働省から発表された平成25年度の「国民生活基礎調査の概況」では便秘でお悩みの方は人口千人あたりで全体では37.8、男女別だと男性26.0、女性48.7となっており、女性はそれ程変わりませんが男性の増加が目立つ結果となりました。日本の人口が約1億3000万人として有訴率から計算すると約470万人(日本人の約26人に1人)の方が便秘を患っていると言われています。年々便秘の患者数は増加傾向ですが、これは食生活の欧米化やストレス増などがその要因とみられています。
年齢層別に見ると、有症率は年齢が高くなるほど上昇し、特に高齢者になると急増しています。その理由として、腹筋力の低下により腹圧が下がり排便しにくくなること、大腸の蠕動運動能の低下に伴い便の運搬力が下がること、骨盤底筋の協調運動能が低下してくること─などが挙げられます。10歳代から50歳代くらいまでの有症率は女性の方が3~6倍程度多く、女性ホルモンの影響と考えられています。妊婦で便秘が増えるのは、子宮を収縮させないように女性ホルモンをより多く分泌するようになることが一因です。子宮や大腸はともに平滑筋からできているため、大腸にも作用し、蠕動運動能が低下すると考えられています。実際、閉経後の年齢になると、男女差は急速に縮まってきます。50歳を過ぎる頃から男女ともその数が増加し始め、特に男性の増加率が高くなります。そして70〜80歳になると男女差がなくなっていきます。これは世界的にどの統計を見ても必ず現れる傾向です。
便秘の分類
便の回数や固さなど、いくつかの評価ポイントはありますが、実は便秘の定義は定まっていません。最近出された慢性便秘ガイドラインでは「本来体外に排出するべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」が便秘であるとされています。つまり、排便が毎日なくても不快な症状はなく、すっきり排便できれば便秘ではなく、逆に毎日排便があっても、それが軟便であっても、スッキリ出きった感じがなければそれは便秘と言えます。
便秘の分類については従来では、器質性・症候性・薬剤性・機能性という分類があり、さらには機能性便秘の中に、痙攣(けいれん)性便秘・弛緩(しかん)性便秘と分けられていました。
従来の便秘の分類
1、器質性 | 大腸がん、大腸憩室、虚血性大腸炎などによる大腸狭窄が原因 |
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2、症候性 | パーキンソン病、甲状腺機能低下症、脳梗塞後遺症などの基礎疾患が原因 |
3、薬剤性 | 抗うつ薬、抗コリン薬などの腸管の蠕動を抑制する薬剤が原因 |
4、機能性 | 痙攣性:副交感神経の過度の興奮によって腸管が緊張しすぎることが原因 |
弛緩性:腸管の緊張がゆるんでしまい、蠕動運動が十分行われないことが原因 | |
直腸性:便が直腸に達しても排便反射が起こらないことが原因 |
国際基準に基づいた新しい便秘の分類
慢性便秘ガイドラインでは下のように分類されています。
排便回数減少型と排便困難型
患者さんの言う「便秘」は腹痛かもしれませんし、腹部膨満感なのかもしれませんし、排便時に便が出しづらいということかもしれません。したがって、患者さんが言う「便秘」という言葉が何を意味しているかを分類するためには、次のどちらか、もしくは両方に当てはまるのかを確認する必要があります。
大腸通過遅延型(排便回数減少型)
3日に1回でも週に1回でも、患者さんがそれで困っていなければ排便回数自体はあまり問題ではありません。ただ、通常は普通に食事をしていれば週1回の排便では腹痛,腹部膨満,硬便による排便困難などいろいろな問題が生じてくるはずで,これが大腸通過遅延型(排便回数減少型)です。30歳代前半までの女性はこのタイプが大半で、腹部膨満や腹痛などを訴えることが多くみられます。ただし、あくまでも回数は目安であり、週3回以上の排便でも、排便回数や排便量が少ないために結腸に円が貯留して腹部膨満感や腹痛などの症状が生じていると思われる場合はこのタイプに分類されます。大腸通過時間などの専門的な検査ができれば、排便回数が減少していても大腸通過正常型を鑑別することも可能ですが、一般的には病態のみで鑑別するため排便回数減少型≒大腸通過遅延型となります。
排便出障害型(排便困難型)
毎日排便があっても、便を出すときに便が出しづらい排便困難や排便後も直腸に便が残っている感覚がある残便感などで困っているというのが排便困難型です。高齢になるとこの割合が高まってきます。排便の回数や排便量、便の硬さに関わらず排便が困難で快適に排便できず、過度の怒責や残便感、頻回便、排便時の肛門・会陰部の不快感があること主な特徴です。
大腸通過遅延型(排便回数減少型) 排便出障害型(排便困難型)
大腸通過遅延型(排便回数減少型) | 排便出障害型(排便困難型) |
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原因について
大腸通過遅延型の原因としては加齢、薬剤、精神・心理的な問題などが、便排出障害の原因としては腹筋・骨盤底筋群の筋力低下、骨盤底筋協調運動障害、直腸知覚低下、直腸収縮力低下などが挙げられます。
大腸通過遅延の原因 | 排便出障害の原因 |
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便の状態別に分類
下剤を服用していないときの排便が3~4日に1回なければ、排便回数が少ないといえます。さらに、排便回数は少ないものの排便時に苦労や問題がなければ、大腸通過遅延型と判断できます。一方、便を出すのに苦労している、残便感があるというのであれば、便排出障害が疑われます。ただし、排便が3~4日に1回となると、便中の水分量が減り硬便となることで排便困難になるケースは少なくありません。そのときは、ブリストル便性状スケールを用いて、便の硬さを確認することが重要となります。タイプ3か、それより硬い便がうまく排出できない場合は、便が硬いために排便困難や残便感を訴えている可能性があります。それに対し、排便はほぼ毎日あり、さらに硬さもタイプ4か、それより緩いけれども便を出すのに苦労している、残便感があるという場合は、便排出障害型言うことができます。
ただし、排便回数が少なくても大腸通過遅延型と必ずしもいえないことがあります。大腸が便を運ぶスピードが遅いわけではなく、単に運ぶものがない、すなわち食物繊維の摂取量が極めて少ないために排便回数が減っているだけのケースも見られるからです。そのため、食事量や食物繊維の摂取量を確認する必要があります。
便秘の検査
軟便でも排便が困難な患者の場合は、便排出障害型である可能性が高いので、排便造影検査などを実施できる専門施設での診断・治療が望ましいと思われます。また患者さんの中には、本当は直腸内に便が残っていないのにまだ便があると思い込んでしまい、ないものを出そうとして苦しんでいる排便強迫神経症の方もいらっしゃいます。排便造影検査を行うと便が残っているかどうかがわかるので,これらを明確に区別することができるので、やはり専門機関での検査が必要となります。この排便強迫神経症の患者さんは,「本来排出すべき糞便」が直腸にはありませんので,真の便秘症ではありません。下剤等の便秘症に対する治療も無効で,潔癖症など他の強迫神経障害と同様に,カウンセリングなどの精神・心理療法が適応となります。
一方、硬便で排便が困難な場合は、大腸通過遅延型の可能性が高いです。
このように、大腸通過遅延型か便排出障害型かを見極め、治療を進めていくことになります。
症状・内服薬・併存疾患・既往歴など病歴聴取と症状の評価
問診で患者さんの症状を詳しく聞くことで、排便回数減少型なのか排便困難型なのか、あるいはその両方なのかを確認します。排便回数や便性(便の硬さや性状)はブリストル便性状スケールに基づいて評価します。
便秘の期間、発症契機、併存疾患、内服薬、手術歴、出産歴、下座の使用の有無は重要な所見となります。
急に便の性状が変わってきた、以前より便が細くなってきている、便に血液がつく、50歳以上、発熱・体重減少が見られる、などの器質的疾患を疑わせる所見があればまずは大腸内視鏡検査を行い、疾患の有無を確認します。
問診では特に内服薬の確認は重要です。抗コリン作用を持つ薬剤や向精神薬、麻薬性鎮痛薬は高頻度に便秘の原因となります。特に高齢者は加齢や各臓器の機能低下に加えてポリファーマシーとなっているため薬剤に注意する必要がありますが、たとえ便秘の原因と推測されても中止できない薬剤も多いため苦慮することが多いです。
身体診察
腹部の視診・触診や直腸内に指を入れる指診などを行うことで患者さんの状態はより詳しくわかります。
腹部X線検査
大腸の拡張や便の貯留の程度、また、直腸内の硬便の有無がわかります。
また、次のような検査を行う施設もありますが当院では施行できません。
大腸通過時間検査
患者さんにX線に写るマーカーを飲んでいただき、その後お腹のレントゲン写真を撮影する検査です。大腸の中にどれくらいマーカーが残っているかによって、便が大腸を通過するのに要している時間がわかります。
排便造影検査
バリウムと小麦粉を混ぜて,やや柔らかい便と同じ程度にした擬似便を患者さんの直腸に注入して便座に座っていただき、排出するところを撮影します。この検査によって,排便困難感や残便感を訴える患者さんの,その原因や実際の排便状態が分かります。
便秘の治療
食事・生活習慣指導
- 規則正しい食事時間と睡眠時間、とくに朝食の欠損や不眠は便秘のリスクです
- 適度な運動
- 水分の摂取
- 繊維成分の多い食事(※大腸通過遅延型や便排出障害の便秘には無効)
便秘の治療においては上記のような食事・生活習慣指導が行われることが多いのですが、その中でも特に強調されるのが食物繊維の摂取です。大腸通過時間が正常なのに便が硬くなる場合には、食物繊維の摂取量が少ないために排便回数が減っているということになりますから、必要量の食物繊維を摂ることを指導します。
しかし、大腸通過遅延型や便排出障害のように体の異常が原因となっている場合には、単に食物繊維の摂取量を増やしても便秘の症状は改善しません。
食物繊維については下でも少し追加してあります。
薬物療法
日本では次の3種類の薬がよく使われています。
- 酸化マグネシウム(商品名:マグラックス、マグミット®など)
- センノシド(商品名:プルゼニド®やアローゼン®など)センナや漢方薬の大黄(だいおう)の主成分
- ピコスルファートナトリウム(商品名:ラキソベロン®)
一方、アメリカでよく使われているのはポリエチレングリコールとラクツロースの2つですが、これらはいずれも日本では便秘治療としての使用が認められていません。また、新しい便秘薬であるルビプロストン(商品名:アミティーザ®)やリナクロチド(商品名:リンゼス®)、直腸内に入れると炭酸ガスが発生する坐薬(商品名:新レシカルボン)などもあります。胆汁酸の再吸収を抑制し、大腸内に流入する胆汁酸の量を増加させることで、大腸に水分を分泌させ、さらに消化管運動を促進させることで排便を促すという新しい機序の便秘薬ももうすぐ出ます。
薬物療法における下剤の使い分け
下剤は、大きく刺激性下剤と非刺激性下剤の2つに分類されます。
非刺激性下剤は大腸を刺激せず、便が出やすい環境を作るものです。おなかは痛くなりません。酸化マグネシウムは浸透圧の差を利用して便に水分を引き寄せ、便を軟らかくします。
便は軟らかくなると速く移動するようになるので、軟便化すると同時に排便回数が増えるようになります。ただし、腎機能低下例や高マグネシウム血症例には使用できません。長期投与する場合は血中のマグネシウム濃度を測定することが勧められています。
ルビプロストン(商品名:アミティーザ®)やリナクロチド(商品名:リンゼス®)も小腸でクロライドチャネルを活性化することで小腸内での水分の分泌を促し、大腸内の便を軟らかくします。このリンゼスは現在は便秘型IBSにしか適応がありませんが、そのうちに慢性便秘症の方にも使えるようになるようです。
一方、刺激性下剤は大腸に直接働きかけるため即効性がありますが、効きすぎることもあります。内服するとおなかが痛くなることも多いです。センノシドは刺激性下剤の代表的なものです。
治療の目標
排便回数は1〜2日に1回、また、便の硬さについてはブリストル便性状スケールの3〜5の範囲になることを目標とします。ただ、日本人は便に対するこだわりが強く、スケールの4しか“良い便“と認めない傾向があるそうです。
便秘と関連疾患
便秘は逆流性食道炎(GERD)、過敏性腸症候群(IBS)、機能性ディスペプシア(FD)、下痢症とオーバーラップすることが知られています。
便秘と大腸がん
便秘が大腸がんや大腸ポリープ゚のリスクであるとの報告があり、胆汁酸や発がん促進物質が長期にわたり大腸粘膜と接触する時間が長いためと考えられています。
適度な運動や食物繊維が大腸がんを減らすとされているのは便秘が改善される結果と思われます。
慢性便秘症の診断・治療の流れ
排便回数減少型が疑われる場合は食物繊維摂取量を確認し、不足している場合は食事指導を行い、コロネル、ポリフルのように便の量を増やす薬剤の処方も検討します。効果不十分なときは酸化マグネシウムを用いることもあります。
食物繊維摂取量が十分であれば酸化マグネシウムの内服から開始します。それでも効果不十分であれば、アミティーザ、漢方薬、(便秘型IBSであればリンゼス)を適宜組み合わせます。複数の薬剤でも効果が十分でなければ、便がなかった日のレスキューとして、就寝前に頓服する刺激性下剤のセンノシドやラキソベロンなどを追加処方しますが、これらの治療が奏効しない場合は、専門施設に紹介することになります。
専門的検査である大腸通過時間検査や排便造影検査を行うことは当院では行えませんが、食物繊維の摂取や下剤を組み合わせることで治せる方も多いです。もちろん、その方に合う薬剤や量などすぐに見つからない方もいますが、生活の改善とともによくなっていく場合が多いので根気強く治療を行うことが重要と考えています。
食物繊維について
食物繊維には“水溶性食物繊維”と“不溶性食物繊維”の2種類が存在します。一般的に“食物繊維”と一括りにして考えられることが多いですが、実はこれらの違いを考慮して食事を考えるのが非常に重要になります。それぞれの食物繊維の違いを簡潔に表すと、水溶性食物繊維とは、水に溶ける食物繊維であり、不溶性食物繊維とは、水に溶けにくい食物繊維のことです。
水溶性食物繊維とは
水溶性食物繊維とは、水に溶ける食物繊維であり、海藻類・果物類に豊富に含まれています。食物繊維のイメージが強いのは“野菜”だと思いますが、野菜、特に葉もの野菜は主に“不溶性食物繊維”を多く含みます。しかし、中には水溶性食物繊維も多く含んでいる野菜もあります。
水溶性食物繊維の効果
水溶性食物繊維は、主に以下の効果があります。
- 食欲を抑える
- 血糖値の上昇を抑える
- コレステロールの排泄
- 便秘改善
食欲を抑える
水溶性食物繊維は水に溶け、胃や腸内をゆっくり移動し、ゆっくり吸収されます。食べ物の吸収速度が遅いというのは、満腹感を維持し、食欲を抑えることにつながります。
血糖値の上昇を抑える
水溶性食物繊維は一緒に摂取した糖質(炭水化物)の吸収速度も抑えることができるので、血糖値を抑えて、糖分を脂肪に変えるのを抑制することが出来ます。
コレステロールの排泄
水溶性食物繊維は、コレステロールを吸着して体外に排泄する働きがあります。コレステロールは、高血圧、動脈硬化、癌などのリスクにつながります。
便秘の改善
腸内の善玉菌を増やして腸内環境を良くし、便秘を改善する働きがあります。
食物繊維の多い食品
「100g当たりの食物繊維含有量」と題して食材を羅列しているものを見かけますが、そのままではあまり参考になりません。なぜなら、100g当たりの食物繊維含有量は、とうがらし:46.4gに対し、キャベツ:1.8gと、とうがらしの方が25倍以上もの食物繊維が含まれているため、とうがらしは食物繊維の摂取に非常に適していることになります。しかしながら、1回の食事でとうがらしを10g以上摂取するのはまず不可能でしょう。そのため、ここでは、『一食に使われる量』を考慮してあげてあります。
水溶性食物繊維の多い食品
豆類は“不溶性食物繊維”が豊富な食材なのですが、納豆・きなこは、食品は水溶性食物繊維も豊富に含まれています。
海藻類 | 寒天、ひじき、めかぶ、わかめ、もずく、昆布など |
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果物類 | キウイ、バナナ、りんご、レモン、柿、桃、いちごなど |
野菜類 | ごぼう、アボカド、オクラ、モロヘイヤ、春菊など |
豆類 | 納豆、きな粉 |
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維とは、水に溶けない食物繊維であり、一般的に皆さんが思い浮かべる食物繊維を表します。これは、まず野菜に多く含まれます。そして、豆類・いも類・きのこ類にも多く含まれます。
野菜類 | ごぼう、菜の花、タケノコ、トウモロコシ、アボカド、春菊、カボチャ、モロヘイヤ、枝豆、ほうれん草など |
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豆類 | インゲン豆、ひよこ豆、えんどう豆など |
いも類 | じゃがいも、しらたき、さつまいも、こんにゃくなど |
きのこ類 | 干しきくらげ、エノキ茸、干しシイタケ、しめじ、なめこなど |
不溶性食物繊維の効果
不溶性食物繊維には以下の効果があります。
食欲を抑える
こちらも水溶性食物繊維と同様に、食欲を抑える効果がありますが、そのメカニズムは異なります。不溶性食物繊維は、水分を含んで胃や腸で膨張します。これにより、満腹感を得ることが出来るのです。また、飲み込むのによく噛んで食べることが必要とされるので、それが満腹中枢を刺激することも食欲を抑える要因となります。
大腸がんの予防
不溶性食物繊維は、体内に蓄積される有害物質の重金属やダイオキシンなど、“発がん性物質”を吸着して体外に排泄してくれます。
便秘改善
これも水溶性食物繊維と同様の効果ですが、そのメカニズムは異なります。不溶性食物繊維は腸内で膨らむことにより、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を促すことで便通が良くなります。
ただし、不溶性食物繊維を摂取し過ぎると、逆に腸の蠕動運動が活発になりすぎ、それが原因で便秘(痙攣性便秘)になってしまうので注意が必要です。
食物繊維の摂取にはバランスが大事
「食物繊維を摂れば便秘が改善できる」
このようなイメージが一般的にあり、実際に不溶性食物繊維も、水溶性食物繊維も便秘を解消する効果があります。しかし、どちらか一方だけ摂取しても、下痢になったり、かえって便秘がひどくなる可能性があります。大事なのは、“バランス”です。
水溶性食物繊維:不溶性食物繊維=1:2
これが推奨されています。とはいえ、これを厳密に守って摂取するにはかなりの努力を強いられると思うので、あくまで、「両方の食物繊維を摂取しよう」と意識するだけで結構でしょう。