舌下免疫療法

この症状は風邪?それとも花粉症?

鼻水やくしゃみ・喉の痛みなどの症状が現れたとき、それが風邪なのか?それとも花粉症なのか?の判断基準となりますので、以下の内容をチェックしてみてください。

  • くしゃみが連続して何度も出る
  • 水っぽいサラサラした鼻水が出てくる
  • 目のふちなどにかゆみがある
  • 熱の症状や喉の痛みはなく、出てくる鼻水には粘り気がない

以上のチェックがすべて当てはまる場合は、アレルギー性鼻炎の可能性があります。

アレルギー性鼻炎と風邪の症状比較表

アレルギー性鼻炎 風邪
喉の痛み・発熱・咳 なし 伴うことが多い
目のかゆみ 伴う場合がある なし
くしゃみ 何度も連続して出る 伴う場合がある
鼻水 サラサラして水っぽい 初期は水っぽく、次第に粘り気が強くなる
経過症状 通年性:一年中
花粉症:飛散時期のみ
1~2週間で改善
原因 アレルゲン(花粉やハウスダストなど) 主にウイルス感染

アレルギー性鼻炎とは

「鼻炎」は、鼻粘膜が炎症を起こしている状態を言いますが、主な原因として風邪やウイルス性の感染症・ハウスダストや花粉などのアレルゲンが挙げられます。
風邪をひいていないのに鼻炎の症状がある場合は、アレルギー性鼻炎の疑いがあります。アレルギー性鼻炎は、そのアレルゲンによって「季節性アレルギー性鼻炎」と「通年性アレルギー性鼻炎」とに分けられます。

アレルギー症状の起こるしくみ

季節性アレルギー性鼻炎

アレルゲンが季節性のもので、一般的に「花粉症」と呼ばれるアレルギー性鼻炎です。アレルゲンとなる花粉が飛散する時期のみ、アレルギー性鼻炎の症状が現れます。スギ・ヒノキ・カモガヤなどの樹木や草花のアレルゲンとなる花粉を鼻から吸い込むことで発症します。2008年におけるアンケート調査の結果から、花粉症患者のおよそ90%、全国民のおよそ4人に1人がスギ花粉症と言われています。

通年性アレルギー性鼻炎

ダニやほこりなどのハウスダスト・ペットの毛などのアレルゲンを鼻から吸い込んで発症するのを通年性アレルギー性鼻炎と言います。季節に関係なく1年中症状が見られるのが特徴です。2002年の報告では、アレルギー性鼻炎と診断された患者さんのうち、およそ6割がダニが原因アレルゲンの可能性があるとされています。また、通年性アレルギー性鼻炎の主な原因はダニと言われています。

アレルギー性鼻炎に対する治療

症状を軽減する薬物治療と、体質改善を目指した治療の2つに大きく別れます。

1.薬物治療

目の痒み・鼻水などの症状を軽減し不快症状をなくす対症療法です。アレルギー反応を起こしたまま、つらい症状が出るまでの途中の反応をコントロールしようとするものです。

対症療法の主な種類
内服薬

抗ヒスタミン薬を中心に、花粉症の症状によって治療の目的が異なるため内服薬の処方が変わってきます。鼻づまりが強い鼻閉型には、抗ロイコトリエン薬を併用していきます。

点鼻薬

鼻づまり・鼻水・くしゃみの症状が強い場合には、点鼻薬も使用します。花粉症の症状によって、単独で使用したり、飲み薬と併用したりと使い方が異なります。

目薬(点眼薬)

目のつらい症状には、抗ヒスタミン成分を含む点眼薬や、ステロイドを含む点眼薬があります。

2.体質改善を目指した治療

体質を改善することで花粉に接触してもアレルギー反応を起こりにくくする治療方法です。以前までは、皮下免疫療法と呼ばれる療法で一定の効果が認められていました。皮膚にアレルゲンとなる物質を定期的に注射してアレルギーを起こしにくい体質にしていきます。しかし、強いアレルギー反応によるアナフィラキシーショックを起こすリスクが高かったため、一般的に普及しませんでした。ここ数年では、舌下免疫治療に効果が見られ一般的になってきました。数年前より、スギ花粉とダニに対する舌下免疫療法が保険適用となりました。

抗ヒスタミン薬

痒みを引き起こす体内物質がヒスタミンです。花粉やハウスダストなどのアレルゲンによって、身体の中にあるマスト細胞からヒスタミンが放出され、H1受容体に作用するとアレルギーの諸症状が現れます。ヒスタミンとH1受容体の結合を抑制するのが抗ヒスタミン薬です。抗ヒスタミン薬には、第一世代抗ヒスタミン薬・第二世代抗ヒスタミン薬があります。

第一世代抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン作用に加えて、抗コリン作用という副作用が強いという特徴があります。眠気や口の渇き・排尿障害・便秘などの症状が見られます。

第二世代抗ヒスタミン薬

第一世代の欠点が改良されたもので、眠気が弱くて抗コリン作用が少ないのが特徴です。病院などで処方される主流の薬は、第二世代抗ヒスタミン薬です。

抗ヒスタミン薬の痒みを軽減する効果には個人差があります。また、抗ヒスタミン薬の副作用には、眠気・集中力・判断力低下があります。これも薬の種類によって個人差が見られますが、とくに自動車の運転には注意が必要です。運転を要する方は医師にご相談ください。基本的に妊娠中の方も服用が可能です。

抗ヒスタミン薬の選択

 

抗ヒスタミン薬の選択には、以下の3点で判断されます。

  • 1日何回内服するか 
  • 増量が可能か
  • 眠気の副作用と効果のバランスはどうか

抗ヒスタミン薬は、状況に応じて飲む回数を選んでいきます。抗ヒスタミン薬の眠気の副作用の度合いによって1日1回~2回と変わります。ご自身では、そんなに眠くなっていないと思っていても、実際は反射神経が下がっている場合があります。自動車の運転に従事する方にとって、「自動車の運転に注意を要するかどうか」の注意書きは、いざ事故をしたときに重要です。薬の効果と眠気との相関はないとされるものの、やはり眠気が強いものは効果も強い印象があるため、自動車運転を要する方は下記の表を参考にしてください。
抗ヒスタミン薬は、ピペラジン系と三環系にも分類されます。効果があまり見られない場合は、ほかの系に変えることで治療効果が見られことがあります。

舌下免疫療法とは

スギやダニに対するアレルギー性鼻炎の治療方法に、舌下免疫療法があります。アレルゲン免疫療法のひとつとして近年一般的になった治療方法です。アレルゲン免疫療法は、100年以上前より行われている治療方法ですが、以前は皮下免疫療法が主流でした。アレルゲンを含む治療薬を皮下注射し、アレルギー症状を緩和します。近年では、アレルゲンを含む治療薬を舌下に投与する舌下免疫療法を自宅でも服用できるようになりました。
舌の下に治療薬をおき、決められた時間とどめた後に飲み込みます。5分間うがいや飲食を控える簡単な治療方法です。正しい治療を長期間継続することで、アレルギー症状を長期にわたって抑制することができます。
完全に症状を抑えられない場合でも、大幅に症状を緩和させ、
アレルギー治療薬を減量できるなどの効果が得られます。
舌下免疫療法は、スギ花粉症及び
ダニアレルギー性鼻炎と確定診断された場合に受けることが可能です。

舌下免疫療法で期待できる効果

舌下免疫療法と薬物療法(対症療法)との違い

薬物療法(対症療法)

痒みを生じるヒスタミンとH1受容体との結合を抑制する薬が抗ヒスタミン薬です。薬物療法によって、痒みを引き起こすヒスタミンなどに働き・鼻の中の炎症を抑えて症状を緩和させていきます。

舌下免疫療法

体質をアレルゲンに慣らすことで、つらい症状を緩和させたり、根本的な体質改善を図る治療方法です。スギ花粉症にはスギ花粉を、ダニアレルギー性鼻炎にはダニのアレルゲンを含む治療薬を使います。

治療を開始する時期

スギ花粉症の場合は、スギ花粉の飛散時期は新しく治療をスタートすることはできません。スギ花粉症のアレルゲンはスギ花粉のため、スギの飛散時期はアレルゲンに対して身体の反応性が過敏になっているため、スギ花粉が飛んでいない6~12月に治療をスタートします。スギ花粉症の治療開始時期は、専門の医師にご相談ください。また、ダニアレルギー性鼻炎の場合は、時期は関係なく1年中治療を始めることができます。

治療期間

アレルゲンに身体を慣らすためには少しずつ投与し、数年にわたって治療を行います。アレルゲン(スギ花粉やダニ)を、1日1回ずつ少量の治療薬投与から開始し、その後も決められた容量を数年にわたって継続服用します。
薬の発売元・鳥居薬品においても「少なくとも3年、5年を目安に」治療継続を勧めています。
治療開始には、医療機関での専門医師の指示のもと行い、2日目からは自宅にて服用ができます。したがって、定期的に受診して経過を確認することが大切です。

効果を感じられる時期

効果が期待できる時期はスギとダニでそれぞれ以下の通りです。

  • スギ:初めてのスギ花粉飛散シーズンから
  • ダニ:治療を始めて数ヶ月後から

長期間(年単位)継続することで最大の効果が得られると考えられています。

長期間にわたって、正しい治療が行われると、アレルギー症状を抑えることが可能です。
治療終了後でも、それから長期間アレルギー症状を抑えることが可能です。
また、完全に症状を抑えられない場合でも、つらい症状を緩和したり、お薬の服用量を減らすことができます。

対象年齢

舌下免疫療法は小児のお子さんから治療ができるようになりました。お悩みの方は医師にご相談ください。

治療の際の注意点

アレルゲンを体内に投与することによって、服用後にアレルギー反応が起こる可能性があります。まれに、アナフィラキシーショックなどの副作用が発現する場合があります。

主な副作用
  • 口の中の副作用(口内炎や舌の下の腫れ、口の中の腫れ、かゆみ、不快感など)
  • 唇の腫れ
  • 咽喉(のど)のかゆみ、刺激感、不快感
  • 耳のかゆみ
  • 頭痛 など
重大な副作用
  • ショック
  • アナフィラキシー

舌下免疫療法の実際

  • 治療開始時期は、担当医師と相談して決めてください。
  • 事前に血液検査で、スギ花粉やダニへの特異的IgE抗体の測定による確定診断が必要です。
  • 服用によるアナフィラキシーショックなど重篤なアレルギー症状の有無を確認するために、初回投与は院内で行います。2回目以降の投与は自宅で行うことができます。
  • 治療中におけるアレルギー症状がないか確認するために、定期的に通院してください。
  • 花粉の飛散時期に、十分な効果が期待できない場合は、舌下免疫療法と従来の治療法を併用します。
  • スギ花粉とダニに対して同時に舌下免疫療法を行うことが可能です。この場合、治療の開始時期はずらします。