院長コラム

2022.06.13

今年はアニサキス当たり年?

今年はアニサキスによる食中毒のニュースをよく見かけます。今年はすでに27都道県で合計100件以上の報告があります。魚介類の生食か原因ですが、感染源はサバ、アジ、イワシなどの青魚、イカ、最近ではカツオなどでも多くみられます。実感としては外食より自分で釣った魚を新鮮なうちに食べて感染することが多い印象です。当院でも原因がわかっている中で一番多いのはサバでした。アニサキス食中毒のほとんどは胃アニサキス症で、アニサキスの虫体が胃の粘膜に侵入して発症するものです。症状としては、魚介類の生食後数時間後からの激しい上腹部痛,悪心,嘔吐です。診察で本疾患を疑った場合は胃内視鏡検査を行います。エコー検査でも診断がつくことがあります。内視鏡で胃の中に虫体が粘膜に頭を突っ込んでいるところが確認できたら、直接鉗子で除去します。粘膜に噛みついているから痛いのではなく、アニサキスに対するアレルギーが原因です。シッポ側をつかんで引っ張ると切れてしまうので、ちゃんと頭をつかんで引き抜くことが重要です。

エコー 図)エコーをした際に見られた胃壁の浮腫による肥厚です(当院で施行)

エコー 左図)エコーをした際に見られた胃壁の浮腫による肥厚です(当院で施行)

アニサキス
左)胃粘膜に頭を突っ込んでいるアニサキス虫体
右)鉗子でアニサキス虫体を除去
(当院で施行)

私もイカの刺身で本疾患にかかったことがありますが、かなり痛いです。
なので、やはり予防が重要です。第一に海産魚介類の生食を避けること,あるいは加熱後に喫食すること(60℃で1分以上)が,確実な感染予防の方法になります。また冷凍処理(-20℃,24時間以上)も有効です。醤油,わさび,酢ではは虫体は死にません。酢で〆ても予防できませんのでご注意ください。よく噛んで食べれば、という意見も聞きますが、すり潰すように食べる人はあまりいないと思うので、これも有効とは思えません。
では、アニサキスに感染しても、医療機関を受診せず、放っておいたらどうなるでしょう?アニサキス自体は胃酸に負けるので長くても4日くらいで死んでしまいます。死んだ後もアニサキスによるアレルギー症状が残る場合もあるので、症状自体は4日以上続くこともありますので、やはり、なるべく早く受診して虫体を除去することがベターだと思います。すぐに内視鏡治療できない時はステロイドなどでアレルギー作用を抑えることで症状を軽減することもあります。
海なし県の埼玉にある当院でも年に1-3件くらいアニサキスを見ることがあります。件数は少ないですが開院してから毎年見られており、今年はすでに2件出ています。やはり今年は多いのかもしれません。

H28年 H29年 H30年 H31・R1年 R2年 R3年 R4年
1件 2件 1件 3件 1件 3件 2件

   
鮮度の良い状態での漁場から市場への冷蔵輸送技術が向上し、美味しい刺身が食べられるようになったためと思われますが、美味しいものを食べるときには注意しましょう。

ちなみに、アニサキスの生態に興味がある方は、このマンガがとても分かりやすいので読んでみてください。
https://ameblo.jp/hirorinnew/entry-11221162342.html