院長コラム

2022.02.07

オミクロン株とワクチン

新型コロナワクチンの3回目のブースター接種が埼玉県でもこの2月から始まります。現在、まん延するオミクロン株にはどれほどの効果があるのか気になるところだと思います。長崎大学などの研究チームの報告によると、今年1月1日~21日までに新型コロナウイルス感染症が疑われる症状で検査を受けた患者400例超を解析したところ、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの2回接種の発症予防効果は51.7%で、昨年の第5波に流行したデルタ型と比べ大幅に低下していたことがわかりました。

報告によると、16~64歳において、ファイザー製あるいはモデルナ製いずれかのワクチンの2回接種完了(2回接種後14日以上経過)による、未接種者と比較した発症予防における有効性は51.7%と推定されましたが、デルタ株が流行した際の同値は88.7%の有効性だったことに対して低下していると考えられるとしています。ただし、感染直前の抗体価を測定しているわけではないので、すでに2回接種から時間がたって抗体価が下がっていた可能性は高いと思われますし、本来ワクチンが感染予防より重症化予防に寄与すると言われていたことを考えると。これだけでオミクロン株に対してワクチンが意味がないと結論付けられないと思います。現在第6波真っ只中の大阪からの報告ですが、重症例27人の背景を見ると、ワクチン接種歴は9人が2回接種済みで、18人が接種歴なし(あるいは不明)、また、死亡した14人の背景は、ワクチン接種歴は6人が2回接種済みで、8人が接種歴なし(あるいは不明)だったとのことです。ワクチンの効果が低下していてもやはり打っていた方がましといえる状況だと思われます。

では現状を改善する方法としては、やはりブースター接種ということになるかと思います。このブースター接種の効果はというと日本ではまだ評価が出ていないので海外からの報告になりますが、イスラエルで年齢が50歳以上で3回目接種を受けたブースター接種群75万8,118例と非ブースター接種群8万5,090例で比較検討されたものです。死亡が主要評価項目とされ、ブースター接種群で65例(10万人あたり0.16人/日)、非ブースター接種群で137例(10万人あたり2.98人/日)という結果が示され、ブースター接種群では死亡率が90%低かった。65歳で区切った年齢や男女別でもブースター接種群がCOVID-19による死亡率が低かった。感染者もブースター接種群で2,888例、非ブースター接種群で1万1,108例であり、ブースター接種群で83%低かった。本研究からはブースター接種が死亡率の低下を示すという心強い結果と捉えることができる。

オミクロン株は重症化しにくいという海外からの報告通り、先の大阪からの報告でも、重症化率や致死率は、これまでの流行期に比べて低い水準にとどまっています。第6波の重症化率は、1月23日時点での集計によると、全年齢で0.05%(5万9353人中27人)であり、60歳代以上でも0.4%(5258人中20人)と、過去の流行期に比べて低いまま推移しています。直近の第5波と比べると、全年齢で20分の1、60歳代以上でも10分の1以下に過ぎません。また、第6波の致死率(新規陽性者数に占める死亡例の割合)は、1月23日時点で、全年齢が0.02%(5万9353人中14人)、60歳以上が0.20%(5258人中13人)と、こちらも過去の流行期に比べて低く、直近の第5波と比べても、全年齢、60歳代以上ともに20分の1にとどまっています。これらは従来のインフルエンザレベルと同じと考えてもよいと思われるレベルです。

それでは体力のある若い方や持病などのないリスクの低い方にはワクチンは不要か??ということになります。私自身の考えで言えば、今回のブースター接種も従来のインフルエンザの予防接種と同様に重症化リスクを下げたり、リスクの高い方にうつさないために接種する、そして、また異なる変異株が出てきて今度は重症化する率が高いなどという時のために備えておくために接種するという意味があるのではと考えています。新型コロナのどの株でも、インフルエンザでも重症化するリスクは、とにかく高齢者、そして基礎疾患のある方、 一部の妊娠後期の方です。 重症化のリスクとなる基礎疾患等には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、 心血管疾患、肥満、喫煙があります。ワクチンの副反応の長期的なリスクはまだ評価できていませんが、やはり、自分のため、身近な人のためにもワクチン接種は必要なものと考えます。当院のスタッフは私を含めて全員接種済みです。

諸外国や沖縄の例から見てもピークアウトは早いとされていますが、一刻も早く収束することを願います。

2022.01.12

2021年診療実績 その2

前回に続き診療実績についてコラムを書きます。

痔核手術(ジオン注、含む) 痔瘻根治術 裂肛根治術 肛門周囲膿瘍
2019年 88 15 17 3
2020年 109 16 23 38
2021年 109 35 19 55
合計 306 66 59 96

3大肛門疾患と呼ばれる痔核・痔瘻・裂肛すべてに対する手術に加えて痔瘻の前段階である肛門周囲膿瘍の手術を行っておりますが、全て日帰り手術で行っております。また、肛門周囲膿瘍は基本的に全例緊急手術です。3大疾患の中ではやはり痔核の症例が多く、年々増加しており、総数は500例を超えました。基本方針として程度の軽い痔核にはジオン注射手術を、脱肛の程度の強いものやジオン注射手術で再発したものには切除術を行っています。肛門周囲膿瘍を経て痔瘻が完成した症例には瘻孔を開放とするlay-open法と瘻孔切除術を症例によって使い分けております。裂肛は基本的に軟膏を主とした保存的治療を主としますが、痛みの強いもの、裂肛を繰り返し狭窄した症例などは手術対象です。

  • 皮膚手術
皮膚腫瘍(粉瘤含む)切除 皮下膿瘍切開排膿
2019年 57 13
2020年 123 41
2021年 104 39
合計 284 93

粉瘤を含めた皮膚腫瘍は昨年はやや減りましたが、一昨年に続き100例を超える手術を行いました。粉瘤はなるべく臍抜きで行うことを基本としていますが、今まで炎症を繰り返してきたものや、あまりに大きいものは昔ながらの切除となります。受診時に既に感染を伴い腫脹している粉瘤は一旦切開して排膿することになります。臍抜き法でやる施設と言うことで遠方からわざわざ当院に来ていただく患者さんも増えました。
これ以外にも切傷の方への縫合手術やトゲなどの異物を手足に刺した方の異物除去手術、爪周囲の感染であるひょう疽の手術も増えてきました。
当院は「緊急でも手術を行うクリニック」であることが特徴ですが、このことが地域の皆さんに認知されてきたと言うことでしょうか。
今後もみなさんのお力になれるよう頑張っていきたいと思います。

2022.01.06

2021年診療実績 その1

みなさま明けましておめでとうございます。

旧年中はお世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。

今年最初のコラムですが、勢いが再燃している新型コロナウイルスや3回目のブースト接種に関して書こうかと思いましたが、自分が3回目の接種を受けてからその感想も含めてまたコラムに載せようかと思います。そこで、今回は昨年の当院での診療実績について書くこととします。

胃内視鏡検査 大腸内視鏡検査 大腸ポリープ切除 全内視鏡検査
2019年 809 548 251 1357
2020年 705 547 255 1252
2021年 646 656 283 1302

 

胃内視鏡検査はやや件数が減りましたが、これはコロナ禍による検査控えというより当院独自の理由があります。当院では午後に検査・手術枠を設けてそこで内視鏡検査や手術を行うのですが、手術を入れる際に胃内視鏡検査の枠を手術に充てることが多いため手術件数が増えるに伴いどうしても検査枠が減ってしまいます。緊急性のある方には午前中や午後の外来の時間中にもやることもあります。実際、アニサキス除去や異物除去も緊急で行うこともありました。また、大腸内視鏡検査のニーズが多いため、胃の検査枠に大腸の検査を入れることもありました。結果として胃内視鏡検査が割りをくった格好です。ピロリ菌を除菌した方は除菌後胃がんに気をつける必要があるため、除菌後だからと安心せずに年1回は胃内視鏡検査を受けましょう。

大腸内視鏡検査は多くの患者さんに受けていただきました。現在も検査を希望される方が多く予約がとりにくい状況になって皆様にご迷惑をおかけして大変申し訳なく思っております。そのため、対策として一部の胃の検査枠を大腸内視鏡検査枠に振り替えて増やしており、また受診時に、下血や明らかに腫瘍の可能性が高いなどの緊急性があると判断した場合は予約に関わらず緊急で検査を行いますのでご安心ください。便潜血陽性などの検診で異常を指摘されてはいるけれど症状のない方はお待ちいただくことが多いですが、便潜血陽性で大腸癌が見つかる方は約3%程度です。そこに年齢などを考慮すると若年の方はさらに確率が下がるため慌てる必要はないかと思います。ただ、ポリープがある方も多いので放置はしない方が良いと思われます。実際、当院でも大腸内視鏡検査行った方(※便潜血陽性以外の方も含まれます)の43%の人にポリープがあり切除を行いました。その中には早期がんを完全に切除できたものもありますし、とってみたら悪性だったという例もありました。肉眼で進行がんと診断できたため組織検査だけを行ったものもありますので、半数近くの方にはポリープやがんがあったということになります。大腸がんは大腸ポリープが大きくなって癌化するという説が有力ですので、どんな進行がんも元々は小さなポリープだったということです。現在大腸がんは、男性のがん死亡数の第3位、女性では第1位ということを考えるといかに早期発見し、早期治療するかが重要であるかがわかると思います。世界中でコロナ禍のため健診・検査を受けなかった人が増えたことから後に進行がんで発見されるのではと懸念されています。どの医療機関も感染対策を行っていますので、ぜひ健診や、何か気になることがあったときはコロナを恐がらず医療機関を受診しましょう。

2021.10.25

コロナは本当に終息?第6波は来る?

新型コロナウイルスの感染者数が劇的に減り、いよいよ色々な制限が解除されようとしています。東京や大阪では、認証を受けている飲食店に対する営業時間の短縮要請が解除されます。感染者数が減った要因の一つとされるのは、ワクチン接種です。

この図から見てもかなりワクチン接種が進んでいることが分かります。接種を完了した後に感染する「ブレークスルー感染」の可能性もあるため、感染対策を引き続きとる必要はありますが、現在の感染者数なら制限を解除するというのは自然な流れだと思います。感染症の専門家は、今後も、「ワクチンを過信せず、打っても自分が感染し、人にうつす可能性もあると考えながら、飲食も含めた行動をしてほしい」としています。例えば、

▽飲食物を口に運ぶとき以外はなるべくマスクを着用
はしやグラスなどは使い回さない
少人数で短時間を心がける
体調が悪いときは参加しない

などが挙げられています。

それでは第6波は来るのでしょうか?日本の新型コロナウイルス感染症は、全国的に5つの波が起こり、流行ごとに主役のウイルス株が入れ替わっています。

4波はアルファ株が中心で、そのリバウンド(再燃)が起こりかけたところでデルタ株が急拡大し第5波を形成しました。では、この冬にやってくるかもしれない第6波は、どんな様相を呈するのでしょうか。今のところ、新たな株の流行の兆しは見られず、主役交代の可能性が見えないことから、デルタ株によるリバウンドが考えられます。海外でも見られたように、ワクチン未接種の人々の間でデルタ株が広がって流行の波を形成するというものです。先のグラフでも分かるように、若年層ほど接種率は低くなっており、こうした年代を中心にデルタ株のリバウンドが起こる可能性は十分にあり得ます。

では他の国はどうでしょう?日本より先にコロナが終息したとして経済活動が再開されているイギリスでは新型コロナウイルスの感染者が増えています。昨年冬よりも、現在の方が感染者が多いのですが、ワクチンが普及したおかげで、入院を必要とする重症者は昨年より少ないという状況です。それでも、イギリス全体の1日の感染者数は増加傾向にあり、最近では14万人を超えています。この感染の増加は何が原因なのでしょう。

イギリスでのある調査によると、ドイツ、フランス、スペインの人たちに比べて、マスクなどで顔を覆わないと答えたイギリス人は、はるかに多かったということです。実際、イギリス政府はマスクの着用を推奨はしていません。また、イギリスはワクチン接種を、他国に先行して大々的に進めましたが、ワクチン接種が他国より早かったからこそ、今になって免疫が低下しているのかもしれません。全人口におけるワクチン接種率でかつて世界一だったイスラエルでは、感染者急増はワクチンの効果低下によるものだと考えられたため、その後、高齢者に追加接種を行い、その結果、感染者数は再び減少しました。

これらから考えられるのは、いつ感染の再爆発が起きるかもしれないので、マスク着用等の感染対策は継続すること、3回目のブースト接種が感染を抑えこむことに有効である可能性があるということです。

追加接種はすぐにはできませんが、マスク着用はすぐに、しかも簡単にできます。ゼロインフルが今でも実現できていないように、ゼロコロナも不可能だと思います。それならば、自分たちでできることを続けながら、withコロナとして経済活動を再開するのが現実的な判断でしょうか。

今年はようやく忘年会ができると思っている方も多いと思います。今のままの感染状況なら、お店も感染対策をきちんと行い、自分たちも節度とルールを守りながらなら、経済活動も進められるように思います。ただ、インフルエンザと違い、抗コロナ用の薬はまだありませんから油断はしないようにしましょう。日本で感染対策と経済活動が両立できることを示したいものです。

当院でも、今後も院内の換気や検査での感染対策、また、来院される方の体温測定や手指消毒、マスク着用も続けていきます。

2021.10.04

今シーズン、インフルエンザは流行するのか?

昨シーズンは、インフルエンザウイルスの検出報告はほとんどなく、心配されていた同時流行はみられませんでした。当院でもインフルエンザ感染者は0人でした。これは新型コロナ対策として普及した手指衛生やマスク着用、三密回避、国際的な人の移動の制限等の感染対策がインフルエンザの感染予防についても効果的であったと考えられます。またインフルエンザウイルスとSARS-CoV-2との間にウイルス干渉が起こった可能性もあります。では、今シーズンについてはどうでしょうか。オーストラリアからの報告によると、2021年流行シーズンにおいて、南半球でもインフルエンザ患者数は昨年同様きわめて少数でした。このことから今年も北半球での流行を認めないのではないかとも考えられます。しかしながら、バングラデシュでは、2021年初夏よりB型、インドでも2021年夏季にA型の流行を認めています。小流行を繰り返すことで、地域でウイルスが保存され、今後国境を越えた人の移動が再開されれば、世界中へウイルスが拡散される懸念があります。前シーズン、インフルエンザに罹患した人は極めて少数であったため、社会全体の集団免疫が形成されていないと考えられます。そのような状況下で、海外からウイルスが持ち込まれれば大きな流行を起こす可能性もあります。実際、今同じようなことがRSウイルスで起きました。今年の夏、子どもの間でRSウイルスが流行しましたが、前年RSウイルスの流行が抑えられたため、同時期にウイルスにさらされていなかった乳児が罹患するリスクが高まったことが原因とされています。インフルエンザについても、同様の現象が発生するリスクがあるため、英国政府は、今年のインフルエンザは早期に流行が始まり、例年の1.5倍の大きさの流行になる可能性があるとして、インフルエンザワクチン接種を呼び掛けています。

今年のインフルエンザワクチン
今年はワクチンが少ないという報道が見られます。実際、多くの病院やクリニックには「今シーズン、インフルエンザワクチンの10月の供給量は昨年の6~7割になる」という連絡が来ています。厚労省によると、昨シーズンは製造効率等が高かったことに対して、今シーズンは例年と同程度の製造効率等のため、8月時点で昨シーズンの7―8割となっています。確かに今年は昨年より供給量の立ち上がりが遅いのですが、そもそも昨年の供給量が例外的に多かったためで、最終的には今年の供給量は例年とそう変わらないようです。そのため、供給ペースは例年より遅いものの、ワクチン不足を過度に心配しなくてもよいかもしれません。ただし、多くの希望者が接種できるとはいえ、少ない供給量でインフルエンザワクチン接種がスタートすることは間違いありません。

インフルエンザワクチン接種の優先度
従来から、下記の因子を有する人は、インフルエンザに罹患した場合の合併症のリスクが高いとされており、これらの因子を有する人を含めて、生後6か月以降で禁忌でない方すべてにワクチン接種が推奨されています。
・6か月以上5歳未満
・65歳以上
・慢性呼吸器疾患(気管支喘息やCOPDなど)
・心血管疾患(高血圧単独を除く)
・慢性腎・肝・血液・代謝(糖尿病など)疾患
・神経筋疾患(運動麻痺、痙攣、嚥下障害を含む)
・免疫抑制状態(HIVや薬剤によるものを含む)
・妊婦
・長期療養施設の入所者
・著しい肥満
・担がん患者

インフルエンザワクチン接種の時期
インフルエンザシーズンの時期と現行の不活化ワクチン効果の減弱を考慮すると、ワクチン接種は理想的には10月末までに行うことが推奨されています。わが国では、現時点で、COVID-19ワクチンとその他のワクチンとは、2週間あけて接種することになっています。なので、COVID-19ワクチンをまだ接種していない人には、まずそちらを優先せざるを得ないかと思われますが、並行してインフルエンザワクチンの接種もご検討いただきたいと考えます。
インフルエンザが最後に流行したのは2020年2月なので、それ以降出生した子どもはインフルエンザに対する抗体をほぼ持っていません。新型コロナ対策を徹底していることから、今冬もインフルエンザが流行しない可能性もありますが、感染症の専門家の多くは警戒しています。
COVID-19は、今年の秋以降も多くの新規患者が発生することが予想されます。そのような中で、ワクチンで予防できる疾患については可及的に接種を行い、医療機関への受診を抑制して医療現場の負担を軽減することも重要です。

当院でのインフルエンザワクチン接種について
当院では10月4日(月)からインフルエンザワクチン接種の予約受付を開始します
接種は10月21日(木)からとなります。13歳以上の方は1回の接種となります。ご希望の方は必ず電話で予約をお願いいたします。
コロナワクチンと重複しないよう、お気をつけください。

2021.09.13

内視鏡検査の感染対策

少しずつワクチンが普及していますが、現時点ではワクチンの効果は症状の発現や重症化を抑制するものの、感染そのものを阻止できるかは不明な点も多く、消化器内視鏡診療においては引き続き個人防護具(PPE)を中心とした確実な感染対策が必要とされています。しかしながら、日本消化器内視鏡学会からは、「感染拡大を過度に恐れることなく消化器内視鏡診療が実施できるよう各施設で感染対策を行い、長期的には、通常の消化器内視鏡診療体制が、あらゆる感染症に対応できる体制となることを理想とする(一部省略)」とメッセージが出ています。そこで、現在、当院で行っている、内視鏡検査における感染対策について説明したいと思います。
まず、他院と異なる点としては当院では内視鏡検査前の血液検査行っていないことです。
内視鏡検査前に行っている梅毒、B型肝炎、C型肝炎検査は内視鏡を介した感染を防ぐために、今も多くの医療機関で保険診療として行われており、人間ドックなどでは内視鏡検査をする場合は、自費で数千円を患者さんに請求しているところもあります。当院でこの検査が行われていないことに不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。内視鏡検査前の感染症検査をやっていない最大の理由は
「内視鏡をきちんと洗浄すれば感染を防げる」
「検査結果によって管理方法が変わらない」
からです。
1.内視鏡をきちんと洗浄すれば感染を防げる
日本消化器内視鏡学会の『消化器内視鏡の洗浄・消毒標準化にむけたガイドライン』でも示されているように、決められた消毒薬を用いて内視鏡洗浄機で洗浄・消毒すれば、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIVなどの既知の菌・ウイルスは死滅します。
また、コロナウイルス感染に対しても特別な洗浄方法があるわけではなく、今までと同様の洗浄で十分とされています。
2.検査結果によって管理方法が変わらない
ほとんどの医療機関では、梅毒、B型肝炎、C型肝炎検査の結果に応じて、内視鏡洗浄などの感染管理の方法を変えていないので、そもそも検査をする意味がありません。つまり、仮に陽性の患者さんに対しても特に対応は変わらないのです。
現在当院では、医師・看護師は、キャップ、マスク、フェイスシールド、長袖ガウン、手袋というPPEの着用、使い捨ての器具を使用すること、ガイドラインに則った内視鏡洗浄、という『スタンダードプリコーション(標準感染予防策)』を行っています。これは感染の有無にかかわらず、汗を除くすべての患者さんの血液・体液・分泌物・排泄物・傷のある皮膚、粘膜には感染リスクがあるとみなし、感染予防策を行うということです。まだ知られていない未知の感染症にも対処しているという意味でとても有用であり、患者さんにも安心して検査を受けていただける環境作りができるものと考えています。
そして、コロナ禍での内視鏡検査として、医療者を介しての患者さん同士の感染を防ぐために、日本消化器内視鏡学会の提言に則り
1. 医療スタッフの健康管理、ワクチン接種
2. PPEの着用の徹底
3. 内視鏡検査室の換気、空気清浄
などの対策を行い、検査を行っています。100%完全な対策はないと思いますが、少しでも皆さんに安心して検査を受けられるように努める所存です。
コロナ禍でもコロナ以外の疾患がなくなったわけではありません。通常と変わらない健康管理を続けましょう。

2021.08.30

新型コロナワクチンの有効性と安全性

久しぶりのコラムになります。新型コロナに関しての情報を書こうかと思っているうちに、事態はどんどん変化しており、頭が追い付かなくなり、夏休みもありついつい時間が空いてしまいました。ワクチンについてもいろんな情報が出ていますが、やはり重要なことは有効性と安全性だと思います。
まず有効性ですが、新規感染者のうち、ワクチン接種済の割合をみてみます。
8月18日に開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードでの報告では、8月10~12日の期間に報告された全国の新規感染者5万7,293例のうち、
ワクチン未接種  4万7,132例   82.3%
1回のみ接種     2,956例   5.2%
2回接種       1,768例   3.1%
接種歴不明      5,437例    9.5%
ということでした。人口10万人当たりの新規感染者数としては、ワクチン未接種では67.6例、1回接種では22.7例、2回接種完了では4.0例と、ワクチン接種を2回完了した人は未接種者の約17分の1の割合であることが明らかとなりました。また、米国疾病予防管理センター(CDC)は、米国内で新型コロナウイルスワクチンの接種を完了した人のうち、コロナ感染により死亡した例は0.001%未満、重症化した例は0.004%未満に留まっていることを、最新データで明らかにしました。
また、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種の安全性に関するエビデンスも徐々に増えており、CDCは、「COVID-19ワクチンを受けるベネフィットが、妊娠中のワクチン接種の既知または潜在的なリスクを上回ることを示唆している」とし、1回目接種後に妊娠が判明した場合でも、2回目の接種を受ける必要があるとしています。日本でも先日の千葉県柏市での事例を受け、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会は、妊婦に対して、妊娠中、とくに妊娠後期に新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、時期を問わずワクチンを接種することを推奨しています。若年層へのワクチン接種も始まっていますが、デルタ株の流行により「若い人は感染しにくい」「若い人は重症化しにくい」という認識が崩れてきており、若年層の中でもワクチン接種を希望する気持ちが強くなる一方で、副作用が怖くて受けたくないという意見も散見されます。もちろん、本人の気持ちが一番ですが、大事なことはデマに惑わされないことだと思います。「妊娠前の接種は不妊、妊娠中は流産につながる」「遺伝情報が書き換えられる」などまことしやかなものや「体に磁石がくっつく」「マイクロチップが埋め込まれる」など怪しく聞こえるものもありますが、ワクチンを受けたくない人はこれらの情報を信じたがる傾向があるそうです。いろんな意見で自分が接種を受けないのは自由ですが、その価値観を押し付けたりSNSに発信して他人を惑わすのはどうかと思います。皆さんも「友人の友人」とか「出所の分からないネットでの情報」のような真偽が確認できないような情報に惑わされないようにしてください。新型コロナにかかってから「ワクチンを受けておけばよかった」と発信している芸能人のことやワクチン反対派で亡くなった落語家さんの友人が「皆さんはワクチンを打ってください」と発信してることをどのように思われますか?抗体カクテル療法など治療も進んではきていますが、やはり今でもコロナの対策の中心はワクチン接種であることは間違いありません。
接種開始前には心配されていたアナフィラキシーですが、厚生労働省によれば、アナフィラキシー報告はファイザー製で100万回接種あたり7件、モデルナ製で100万回接種あたり1.0件と非常に稀です。ちなみに、厚労省は1回目の接種でアナフィラキシーを起こした人は2回目は禁忌と言っていますが、海外では1回目の接種でアナフィラキシーを起こした人にも2回目を接種し、安全に接種を行えたとの報告もあります。リスクとベネフィットを考えた場合、それでもベネフィットの方が多いという考えでしょうか。いずれにしても、今後さらに情報が集まり、ワクチンが十分に流通するようになれば、インフルエンザワクチンの様に日常的に接種できるようになるのかもしれません。私もせっかくワクチン接種を受けたので、早くみんなで外食できるようになるとうれしいなといつも思っています。

2021.06.28

ワクチン接種後スパイクタンパク抗体(中和抗体)検査

新型コロナウイルスの2回目の接種を既に終えられた方も増えてきていると思いますが、自分自身がきちんと抗体を獲得できているか気になるところだと思います。

千葉大学からの報告では
・男性より女性が抗体価が上がりやすい
・年齢が若い方が抗体価が上がりやすい
・1回目と2回目の接種間隔が長い方が抗体価が上がりやすい
・抗アレルギー薬の内服があると抗体価が上がりやすい
・免疫抑制薬の内服があると抗体価が上がりにくい
と報告されていますが、自分はどうかと気になると思います。そこで、当院でも抗体検査を導入することとしました。今までの抗体検査はコロナウイルスに感染したことがあるか調べるIgG(N)抗体検査でしたが、今回導入したものはIgG(S)抗体検査です。

検査方法  使用目的
IgG(S)抗体検査(スパイクタンパク抗体) ワクチン接種後の中和抗体が産生されたか調べる
IgM抗体検査 現在、ウイルスが体内に存在するか調べる
IgG(N)抗体検査 過去、ウイルスが体内に存在したか調べる

スパイクタンパク質(S)に対する抗体とは
現在接種されているファイザー社のものもモデルナ社のものもmRNAワクチンであり、このタイプのワクチンは、ウイルスの表面に存在するスパイクタンパク質(S)に対する抗体を誘導することで、COVID-19の発症予防効果を発揮します。このスパイクタンパク質(S)に対する抗体が、ワクチン接種後の免疫獲得を示す良い指標であると考えられています。

スパイクタンパク抗体(中和抗体)検査をおすすめする方
・過去に新型コロナに感染したかどうかはっきりせず、ワクチンを接種すべきかどうか迷っている方。
※過去に新型コロナに感染していても、WHOはワクチン接種を推奨しています。
・ワクチン接種後に副反応がない、もしくは弱かったため、ワクチンの効果が心配な方。
・1回目のワクチンで副反応が強く、もう抗体がついているのか確認したい方。
※ワクチンは2回の接種が推奨されています。
・ワクチン接種後の自分の抗体価を確認したい方。
・免疫を抑制する薬・治療(ステロイドなど)をしていて、抗体がついているか心配な方。

スパイクタンパク抗体(中和抗体)検査はいつ受ける?
・ワクチン接種後28日目以降が目安です

スパイクタンパク抗体(中和抗体)がどれくらいあればいい?
ウィルス量を50% まで減少させることを確認する培養細胞での試験(プラーク減少中和試験(PRNT))では、4160AU/mlあれば95%の確率で高力価とされていますが、それ未満であっても中和活性が認められないというわけではありません。
ただし、ヒトの体内でどれだけの抗体価があれば、発症や重症化予防に十分であるかは明らかになっていません。
今回の検査では50AU/ml以上であれば【陽性】と判定されます。

スパイクタンパク抗体(中和抗体)はいつまで残る?
国立国際医療研究センターから2回目接種後7日の時点が最も高く、2カ月で平均41%に3カ月で25%に減少する可能性が報告されていますが、その時点でも4160AU/ml以上あることから十分に抗体が産生されている可能性が高いと考えられます。

注意事項
・スパイクタンパク抗体(中和抗体)が陽性であれば、免疫を獲得している状態で再感染や重症化のリスクは低いと考えられます。しかしながら、終生免疫を保障するものではなく、また、抗体があっても感染しないということではありませんので、引き続き感染予防に注意して生活してください。
・タンパク抗体(中和抗体)が陰性だった場合、何らかの理由で抗体が十分に産生されなかった可能性がありますが、日本では追加接種は認められていません。

スパイクタンパク抗体検査は自費診療です(6,000円、税別)

私を含め当院のスタッフ全員にこの検査を施行したところ、全員陽性、平均は10467AU/mlでした。一安心というところですが、予防接種が進んだイスラエルでもマスクの義務を中止したところ、感染が再拡大してきています。抗体ができたからといって油断すると変異型にやられてしまうかもしれないということでしょうか。
COVID-19 の全貌が明らかになっていない現状では、予防接種が終わっても、抗体ができても、油断しないで換気、マスク、消毒がまだまだ重要です。

2021.05.24

「新型コロナワクチン予防接種」始まる

ここ埼玉県でもインド型変異株が検出されるなど全国的に新型コロナ感染症の勢いも強く日常生活が脅かされている事態が続いています。外出制限や手指消毒、マスク着用をしている方にとって、これ以上の対策として期待されているのは、やはりワクチン接種になるかと思います。各地で高齢者に対する予防接種が始まっており、埼玉での大型集団接種会場での予約も5月25日から始まります。白岡市でもすでにワクチン接種は始まっており、当院でも今週から対応を開始します。なるべく多くの方に接種したいと考えてはいますが、アナフィラキシー対策としての観察時間も必要であり、また、密を避ける必要もあり、診療中にどう対応するかも含めて悩ましいところです。なので、当初は枠を絞っているために当院のかかりつけでありながら予約をとれなかった方には申し訳ない気持ちです。
当院スタッフはありがたいことに私を含め全員ワクチン接種を無事終えました。みんなの経験をまとめると
1.注射したところはしばらく痛い
2.発熱・熱感・倦怠感は出る可能性が高い
3.1回目より2回目のほうが副反応は強い
というように、今までに言われていることと同じ結果でした。ただし、2日後にはほとんど症状は改善します。私を含め花粉症などのアレルギーのある者もだれもアナフィラキシーにはなりませんでした。
もちろん、100%安全ということはありませんから、最後は皆さん自身が接種されるか決めなければいけません。接種を受けない自由もあります。私は自身が感染するというより自分を介して誰かに感染を広げてしまうことが怖いので接種を受けました。
白岡市では接種を受けるには予約が必要ですが、それは各施設が個別で受けるのではなく、予約センターが一括で行っているため、当院に電話されても予約はできませんのでご了承ください。
最近診療中に患者さんたちによく聞かれるのは、『自分はワクチン接種を受けていいか?』という質問です。これに対しては厚労省がホームページで以下のように答えています。
Q)ワクチンを接種することができないのはどのような人ですか。
一般に、以下の方は、ワクチンを接種することができません。ご自身が当てはまると思われる方は、ワクチンを接種しても良いか、かかりつけ医にご相談ください。
・明らかに発熱している方(※1)
・重い急性疾患にかかっている方
・ワクチンの成分に対し、アナフィラキシーなど重度の過敏症(※2)の既往歴のある方
・上記以外で、予防接種を受けることが不適当な状態にある方
(※1)明らかな発熱とは通常37.5℃以上を指します。ただし、37.5℃を下回る場合も平時の体温を鑑みて発熱と判断される場合はこの限りではありません。
(※2)アナフィラキシーや、全身性の皮膚・粘膜症状、喘鳴、呼吸困難、頻脈、血圧低下等、アナフィラキシーを疑わせる複数の症状。
Q)ワクチンを接種するのに注意が必要なのはどのような人ですか。
一般に、以下の方は、ワクチンを接種するに当たって注意が必要です。ご自身が当てはまると思われる方は、ワクチンを接種しても良いか、かかりつけ医にご相談ください。
・過去に免疫不全の診断を受けた人、近親者に先天性免疫不全症の方がいる方  
・心臓、腎臓、肝臓、血液疾患や発育障害などの基礎疾患のある方  
・過去に予防接種を受けて、接種後2日以内に発熱や全身性の発疹などのアレルギーが疑われる症状がでた方  
・過去にけいれんを起こしたことがある方 
・ワクチンの成分に対して、アレルギーが起こるおそれがある方
また、新型コロナワクチンは筋肉内に注射することから、  
・抗凝固療法を受けている人、血小板減少症または凝固障害のある方
は、接種後の出血に注意が必要とされています。
心配な方はかかりつけ医にご相談くださいということになっていますので、当院かかりつけの方はすべて当院で接種できれば一番話が早いのですが・・・。
そして、接種後の生活ですが、以下のことに注意してください。
・ワクチン接種当日は過度な飲酒を控えましょう
・ワクチン接種当日は激しい運動は控えましょう
・入浴は問題ありませんが、注射部位を強くこすらないように注意しましょう( 発熱した場合は入浴は避けてください)
そして、一番大事なことは
ワクチン接種後も「3密の回避」「マスクの着用」 「石けんによる手洗い・手指消毒」は継続しましょう
ということです。海外ではワクチン接種後はマスク無しでもOKというところもありますが、やはり、感染対策の基本です。そのうちに元の生活になるかもしれませんが、今はまだ我慢しましょう。
予防接種を受けるときには必ずクーポン券を持参してください。また、肩全体をすぐに出せる服で接種会場に行きましょう。

2021.04.30

「新型コロナワクチン( 1回目)」接種しました

2月17日から先行接種対象者に接種開始となったファイザー社の新型コロナワクチンですが、当院スタッフにもついに接種できることとなり、近くの総合病院で1回目の接種を受けました。今までわかっている情報から、副反応に関しては承知していましたが、やはり、その通りでした。注射直後は痛みを感じませんでしたが、その夜から接種部に痛みが出現しました。赤くなったり腫れたりはしませんでしたが、約2日間痛みはありましたが、その後は完治しました。頭痛や発熱は自覚しませんでした。他のスタッフにも確認しましたが、当院での副反応の発生率は70%でした。接種部の痛みのみで発熱や倦怠感などは出ませんでした。
全国ではどうかというと、約18000人の医療従事者に行ったワクチン接種の結果、
主な症状と発症率は以下のとおりでした(1回目/2回目)。
発熱(37.5℃以上):3.3%/35.6%
発熱(38℃以上):0.9%/19.1%
接種部位反応:92.9%/93.0%
発赤:13.9%/16.0%
疼痛:92.3%/91.9%
腫脹:12.5%/16.9%
硬結:10.6%/9.9%
熱感:12.8%/16.6%
かゆみ:7.9%/10.4%
倦怠感:23.2%/67.3%
頭痛:21.2%/49.0%
接種部位の疼痛については1回目、2回目ともに接種翌日時点で約90%の接種者が記録しており、これは2009年のインフルエンザワクチン 2万人調査での疼痛出現の割合(43.8%)と比較しても、頻度が明らかに高いことが示されています。そして、ほとんどの副反応が1回目より2回目に出やすくなっています。これはアメリカでのファイザー社のワクチンを接種していた症例での有害事象が、1回目より2回目投与後のほうが多く、発熱と悪寒の割合は2回目の投与後のほうが1回目よりも4倍以上高かった、という報告に一致していると言えます。懸念されてたアナフィラキシーの報告は 3/21時点で135件で、割合は100万回当たり81件で、全て回復したとのことです。
3週間後に2回目を接種するため、今度は熱が出るかもとも思いますが、全身の反応が出るのはワクチンにきちんと免疫系が反応しているとも言われていますしある程度は仕方がないことなのだと思います。当院も予防接種のサテライト施設となっているため、皆さんに接種する前に接種を終わらせ、万全の体制で臨みたいと思います。ワクチンを心待ちにしている方、不安で迷っている方、いろんな考え方があるかと思いますが、また感染者が増えてきている中、普段から十分に感染対策をしている方は、これ以上何をすればいいのかと思っていらっしゃるかと思います。イスラエルでの感染抑制の報告もあり、他に効果的な方法がないことからも、やはりワクチンは有効と思われます。
一部報道では医療機関が協力しないから接種が進まないとの報道がありますが、少なくともこの地域では単純にワクチンが足りないからです。それでも少しずつ準備が進んできていますので、感染予防対策をしながら接種の順番を待っていてください。私達もできる限り協力したいと考えています。

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