院長コラム

2017.09.21

「糖尿病」と「がん」

現在、特定健診が行われていますが、皆さんは受けられましたか?また人間ドックなどを受けられた方もいらっしゃると思いますが、結果は確認されていますか?糖尿病のところに「要受診」「要治療」の指摘はされていないでしょうか?今では国民の男性の約4人に1人、女性の約5人に1人が糖尿病もしくはその予備軍と言われていますが、糖尿病は失明や腎不全の原因となり、また、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めることはご存知かと思いますが、近年では、糖尿病とがんの関連性が問題になっています。糖尿病により、がんになる総リスクは20-30%増加し、2型糖尿病患者では、罹病期間が長いほどがんの発症率が高くなり、罹病15年以上の患者は、15年未満の患者に対して、男性で1.6倍、女性で1.8倍になるとの報告もあります。下の図には最近報告された、2型糖尿病の人ががんで上昇する死亡リスクをグラフにしたものです。糖尿病でない人と比べて、糖尿病の人が胃がんで死亡する確率は1.84倍、大腸がんなら1.41倍といったものです。



糖尿病ががんのリスクを増加させる原因としては、肥満の合併、血糖を処理するホルモンであるインスリンが効きにくくなることにより引き起こされる高インスリン血症やIGF-1というホルモンの上昇、慢性炎症(炎症性サイトカインの増加)あるいは、高血糖自体の関与の可能性が指摘されています。実際、肥満や運動不足、食習慣(高カロリー、高脂肪、低繊維)、アルコール多飲、社会経済活動などは、糖尿病とがんに共通するリスクファクターであり、糖尿病を予防するための行動が死亡率やがん発症率を低下させることがわかっています。

健診で異常を指摘された方の約4割の方が受診されないとのデータがあります。お手元の健診結果をもう一度見直していただき、血糖、HbA1cの異常を指摘されている方は、糖尿病の治療を受けることはもちろん、がんの予防・早期発見のために、定期的にがん検診を受けることもご検討ください。