院長コラム

2018.11.16

最近の風疹の流行

風疹(ふうしん)が今年8月ごろから首都圏を中心に急増しています。国立感染症研究所の調べによると、2018年の風疹患者数は、すでに2014~2017年の年間平均の約10.8倍にあたる1884人(2018年11月7日現在)となっており、今後ますます感染が拡大する可能性もあります。

風疹とは、発熱や発疹、リンパ節の腫れなどが主な症状で「はしか」と呼ばれる麻疹とは似ていますが、症状自体は麻疹よりも軽いため「三日ばしか」ともいわれています。好発年齢は5~14歳で、もともと子供の病気なのですが現在の感染者の半分以上は、「30~50代の男性」です。これはこの疾患の唯一の予防方法である予防接種と関係があります。

風疹ワクチンは生涯で2回のワクチン接種が必要です。(風疹ワクチンを1回接種した人に免疫ができる割合は約95%、2回接種した人に免疫ができる割合は約99%と考えられています)。上記の表のように風しんワクチンは年代および性別によって接種回数が異なるため、特に30-50代(特に男性)は接種回数が不足している可能性が高いです。こうした理由により、風疹はワクチンで予防可能な感染症であるにもかかわらず、いまだ感染者があとを絶ちません。

風疹が問題になるのは「先天性風疹症候群」があるからです。妊娠20週頃までの妊婦が風疹にかかった場合、出生児が感音性難聴、先天性白内障または緑内障、先天性心疾患(動脈管開存症、肺動脈狭窄、心室中隔欠損、心房中隔欠損など)などの障害を持って生まれてくることを指し、発症する確立は妊娠1ヶ月で風疹にかかった場合50%以上、妊娠2ヶ月の場合は35%などとされています。

ワクチンを接種していない30~50代の男性をはじめとした風疹患者が感染源となり、妊婦や胎児に風疹が感染してしまう危険性が高いことから、2018年10月23日、ついにアメリカCDCは風疹免疫を持たない妊婦の日本への渡航自粛を発表しました。

妊娠中の女性は予防接種が受けられないため、特に流行地域においては、抗体を持たない又は抗体価の低い妊婦は、風疹が発生している地域では、可能な限り不要不急の外出を避けていただき、やむを得ず外出をする際には可能な限り人混みを避けていただくなど、風疹にかからないように注意してください。また、妊婦の周りにいる人(妊婦の夫、子ども、その他の同居家族等)は、風疹に感染しないように予防に努めて下さい。

風疹は一度かかると、多くの場合、生涯かかることはないと言われています。しかし、子どもの頃に感染した記憶があっても「はしか」や「リンゴ病」などを風疹だと勘違いしていたということも少なくありません。抗体のつきにくい方もいるので一度罹患したからと言って、免疫があるとは限りません。たとえあなたがこれまで予防接種をうけていたとしても、または風疹にかかっていたとしても、再度予防接種をうけることによる特別な副反応がおこることはありません。そのため感染予防の観点から、今回あらためて予防接種を行うことは全く問題ありません。しかしながら現在風疹ワクチンの流通量が減っていますので、妊娠の可能性がある女性やそのパートナーの男性はまずは抗体価を測定することをお勧めします。妊娠を希望される女性やその配偶者、低抗体価の妊婦の配偶者は、県やさいたま市、川越市、越谷市及び川口市が実施する「風しん抗体検査」を受けることで、ご自身に風疹の発症や重症化を予防できる免疫があるか確認することができます。

当院でも実施しておりますのでご相談ください。