院長コラム

2020.06.15

Withコロナの夏

新しい生活様式では、国民一人ひとりが取り組むべき感染防止の3原則(身体的距離の確保、マスクの着用、手洗い)に加え、「密集、密接、密閉」の3密の空間を避けることや、テレワークなどの新たな働き方の推進などが推奨されています。
 こうした新しい生活様式下では、長期にわたって室内に滞在することになります。熱中症の多くは高齢者の屋内での発症であることから、長期の室内滞在で熱中症リスクは高まります。新型コロナ感染症を防ぐための新しい生活様式を励行するあまり、熱中症に罹ってしまっては元も子もありません。そこで、日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本感染症学会、日本呼吸器学会の4つの学会が合同で“Withコロナの夏“における熱中症予防の注意点を緊急提言としてまとめました。

With コロナの夏における熱中症予防の注意点

(1)屋内においては、室内換気に十分な配慮をしつつ、こまめにエアコン温度を調節し室内温度を確認しましょう。
(2)マスク着用により、身体に負担がかかりますので,適宜マスクをはずして休憩することも大切です。ただし感染対策上重要ですので,はずす際はフィジカルディスタンシングに配慮し、周囲環境などに十分に注意を払って下さい。また口渇感に依らず頻回に水分も摂取しましょう。
(3)体が暑さに慣れていない時期が危険です。フィジカルディスタンシングに注意しつつ、室内・室外での適度な運動で少しずつ暑さに体を慣れさせましょう。
(4)熱中症弱者(独居高齢者、日常生活動作に支障がある方など)の方には特に注意し、社会的孤立を防ぐべく、頻繁に連絡を取り合いましょう。
(5)日頃の体調管理を行い、観察記録をつけておきましょう。おかしいなと思ったら、地域の「帰国者・接触者相談センター」や最寄りの医療機関に連絡・相談をしましょう。

当然、当院でもこれらのことを考慮して、エアコンでの室温を管理することと同時に寒気に注意しています。通常の家庭用エアコンは空気を循環させるだけで、換気の機能はないため、窓を開け、サーキュレーターを用いて風の流れができるようにしています。皆さんのご自宅でも換気に留意してエアコンを使用してください。
また、マスクの長時間の着用は身体への負担をかけるため、適宜マスクをはずして休憩することも必要とされています。特に屋外では、他の人と距離が保てている場合はマスクをはずすことも大事だと思います。不必要にN95などの高機能マスクを屋外で使用すると、熱がこもり、体への負担も大きくなるので着用しないことが勧められています。
ただでさえ温暖化現象で年々暑さが激化している事に加え、新型コロナにも注意しなければならないという“Withコロナの夏“は、世界にとって初めての経験となります。
「新型コロナウイルスと気温・湿度についての関連性についても十分なエビデンスに基づくデータはなく、コロナ禍における熱中症の予防や治療に関しても、依然、学術的にも情報が限られており、ゆえに、今回の提言はアップデートされる可能性がある」とも付け加えられており、今後も新型コロナウイルス対策と熱中症対策の両立について、いろいろ工夫していく必要がありそうです。
ご自身の体調が変化し、熱中症か新型コロナ感染症かわからず不安な際は、かかりつけ医に相談しましょう。
ちなみに、世界では、「ソーシャルディスタンス」から「フィジカルディスタンシング」という言葉に移行しつつあります。