院長コラム

2021.08.30

新型コロナワクチンの有効性と安全性

久しぶりのコラムになります。新型コロナに関しての情報を書こうかと思っているうちに、事態はどんどん変化しており、頭が追い付かなくなり、夏休みもありついつい時間が空いてしまいました。ワクチンについてもいろんな情報が出ていますが、やはり重要なことは有効性と安全性だと思います。
まず有効性ですが、新規感染者のうち、ワクチン接種済の割合をみてみます。
8月18日に開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードでの報告では、8月10~12日の期間に報告された全国の新規感染者5万7,293例のうち、
ワクチン未接種  4万7,132例   82.3%
1回のみ接種     2,956例   5.2%
2回接種       1,768例   3.1%
接種歴不明      5,437例    9.5%
ということでした。人口10万人当たりの新規感染者数としては、ワクチン未接種では67.6例、1回接種では22.7例、2回接種完了では4.0例と、ワクチン接種を2回完了した人は未接種者の約17分の1の割合であることが明らかとなりました。また、米国疾病予防管理センター(CDC)は、米国内で新型コロナウイルスワクチンの接種を完了した人のうち、コロナ感染により死亡した例は0.001%未満、重症化した例は0.004%未満に留まっていることを、最新データで明らかにしました。
また、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種の安全性に関するエビデンスも徐々に増えており、CDCは、「COVID-19ワクチンを受けるベネフィットが、妊娠中のワクチン接種の既知または潜在的なリスクを上回ることを示唆している」とし、1回目接種後に妊娠が判明した場合でも、2回目の接種を受ける必要があるとしています。日本でも先日の千葉県柏市での事例を受け、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会は、妊婦に対して、妊娠中、とくに妊娠後期に新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、時期を問わずワクチンを接種することを推奨しています。若年層へのワクチン接種も始まっていますが、デルタ株の流行により「若い人は感染しにくい」「若い人は重症化しにくい」という認識が崩れてきており、若年層の中でもワクチン接種を希望する気持ちが強くなる一方で、副作用が怖くて受けたくないという意見も散見されます。もちろん、本人の気持ちが一番ですが、大事なことはデマに惑わされないことだと思います。「妊娠前の接種は不妊、妊娠中は流産につながる」「遺伝情報が書き換えられる」などまことしやかなものや「体に磁石がくっつく」「マイクロチップが埋め込まれる」など怪しく聞こえるものもありますが、ワクチンを受けたくない人はこれらの情報を信じたがる傾向があるそうです。いろんな意見で自分が接種を受けないのは自由ですが、その価値観を押し付けたりSNSに発信して他人を惑わすのはどうかと思います。皆さんも「友人の友人」とか「出所の分からないネットでの情報」のような真偽が確認できないような情報に惑わされないようにしてください。新型コロナにかかってから「ワクチンを受けておけばよかった」と発信している芸能人のことやワクチン反対派で亡くなった落語家さんの友人が「皆さんはワクチンを打ってください」と発信してることをどのように思われますか?抗体カクテル療法など治療も進んではきていますが、やはり今でもコロナの対策の中心はワクチン接種であることは間違いありません。
接種開始前には心配されていたアナフィラキシーですが、厚生労働省によれば、アナフィラキシー報告はファイザー製で100万回接種あたり7件、モデルナ製で100万回接種あたり1.0件と非常に稀です。ちなみに、厚労省は1回目の接種でアナフィラキシーを起こした人は2回目は禁忌と言っていますが、海外では1回目の接種でアナフィラキシーを起こした人にも2回目を接種し、安全に接種を行えたとの報告もあります。リスクとベネフィットを考えた場合、それでもベネフィットの方が多いという考えでしょうか。いずれにしても、今後さらに情報が集まり、ワクチンが十分に流通するようになれば、インフルエンザワクチンの様に日常的に接種できるようになるのかもしれません。私もせっかくワクチン接種を受けたので、早くみんなで外食できるようになるとうれしいなといつも思っています。