院長コラム

2021.09.13

内視鏡検査の感染対策

少しずつワクチンが普及していますが、現時点ではワクチンの効果は症状の発現や重症化を抑制するものの、感染そのものを阻止できるかは不明な点も多く、消化器内視鏡診療においては引き続き個人防護具(PPE)を中心とした確実な感染対策が必要とされています。しかしながら、日本消化器内視鏡学会からは、「感染拡大を過度に恐れることなく消化器内視鏡診療が実施できるよう各施設で感染対策を行い、長期的には、通常の消化器内視鏡診療体制が、あらゆる感染症に対応できる体制となることを理想とする(一部省略)」とメッセージが出ています。そこで、現在、当院で行っている、内視鏡検査における感染対策について説明したいと思います。
まず、他院と異なる点としては当院では内視鏡検査前の血液検査行っていないことです。
内視鏡検査前に行っている梅毒、B型肝炎、C型肝炎検査は内視鏡を介した感染を防ぐために、今も多くの医療機関で保険診療として行われており、人間ドックなどでは内視鏡検査をする場合は、自費で数千円を患者さんに請求しているところもあります。当院でこの検査が行われていないことに不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。内視鏡検査前の感染症検査をやっていない最大の理由は
「内視鏡をきちんと洗浄すれば感染を防げる」
「検査結果によって管理方法が変わらない」
からです。
1.内視鏡をきちんと洗浄すれば感染を防げる
日本消化器内視鏡学会の『消化器内視鏡の洗浄・消毒標準化にむけたガイドライン』でも示されているように、決められた消毒薬を用いて内視鏡洗浄機で洗浄・消毒すれば、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIVなどの既知の菌・ウイルスは死滅します。
また、コロナウイルス感染に対しても特別な洗浄方法があるわけではなく、今までと同様の洗浄で十分とされています。
2.検査結果によって管理方法が変わらない
ほとんどの医療機関では、梅毒、B型肝炎、C型肝炎検査の結果に応じて、内視鏡洗浄などの感染管理の方法を変えていないので、そもそも検査をする意味がありません。つまり、仮に陽性の患者さんに対しても特に対応は変わらないのです。
現在当院では、医師・看護師は、キャップ、マスク、フェイスシールド、長袖ガウン、手袋というPPEの着用、使い捨ての器具を使用すること、ガイドラインに則った内視鏡洗浄、という『スタンダードプリコーション(標準感染予防策)』を行っています。これは感染の有無にかかわらず、汗を除くすべての患者さんの血液・体液・分泌物・排泄物・傷のある皮膚、粘膜には感染リスクがあるとみなし、感染予防策を行うということです。まだ知られていない未知の感染症にも対処しているという意味でとても有用であり、患者さんにも安心して検査を受けていただける環境作りができるものと考えています。
そして、コロナ禍での内視鏡検査として、医療者を介しての患者さん同士の感染を防ぐために、日本消化器内視鏡学会の提言に則り
1. 医療スタッフの健康管理、ワクチン接種
2. PPEの着用の徹底
3. 内視鏡検査室の換気、空気清浄
などの対策を行い、検査を行っています。100%完全な対策はないと思いますが、少しでも皆さんに安心して検査を受けられるように努める所存です。
コロナ禍でもコロナ以外の疾患がなくなったわけではありません。通常と変わらない健康管理を続けましょう。