院長コラム

2021.10.04

今シーズン、インフルエンザは流行するのか?

昨シーズンは、インフルエンザウイルスの検出報告はほとんどなく、心配されていた同時流行はみられませんでした。当院でもインフルエンザ感染者は0人でした。これは新型コロナ対策として普及した手指衛生やマスク着用、三密回避、国際的な人の移動の制限等の感染対策がインフルエンザの感染予防についても効果的であったと考えられます。またインフルエンザウイルスとSARS-CoV-2との間にウイルス干渉が起こった可能性もあります。では、今シーズンについてはどうでしょうか。オーストラリアからの報告によると、2021年流行シーズンにおいて、南半球でもインフルエンザ患者数は昨年同様きわめて少数でした。このことから今年も北半球での流行を認めないのではないかとも考えられます。しかしながら、バングラデシュでは、2021年初夏よりB型、インドでも2021年夏季にA型の流行を認めています。小流行を繰り返すことで、地域でウイルスが保存され、今後国境を越えた人の移動が再開されれば、世界中へウイルスが拡散される懸念があります。前シーズン、インフルエンザに罹患した人は極めて少数であったため、社会全体の集団免疫が形成されていないと考えられます。そのような状況下で、海外からウイルスが持ち込まれれば大きな流行を起こす可能性もあります。実際、今同じようなことがRSウイルスで起きました。今年の夏、子どもの間でRSウイルスが流行しましたが、前年RSウイルスの流行が抑えられたため、同時期にウイルスにさらされていなかった乳児が罹患するリスクが高まったことが原因とされています。インフルエンザについても、同様の現象が発生するリスクがあるため、英国政府は、今年のインフルエンザは早期に流行が始まり、例年の1.5倍の大きさの流行になる可能性があるとして、インフルエンザワクチン接種を呼び掛けています。

今年のインフルエンザワクチン
今年はワクチンが少ないという報道が見られます。実際、多くの病院やクリニックには「今シーズン、インフルエンザワクチンの10月の供給量は昨年の6~7割になる」という連絡が来ています。厚労省によると、昨シーズンは製造効率等が高かったことに対して、今シーズンは例年と同程度の製造効率等のため、8月時点で昨シーズンの7―8割となっています。確かに今年は昨年より供給量の立ち上がりが遅いのですが、そもそも昨年の供給量が例外的に多かったためで、最終的には今年の供給量は例年とそう変わらないようです。そのため、供給ペースは例年より遅いものの、ワクチン不足を過度に心配しなくてもよいかもしれません。ただし、多くの希望者が接種できるとはいえ、少ない供給量でインフルエンザワクチン接種がスタートすることは間違いありません。

インフルエンザワクチン接種の優先度
従来から、下記の因子を有する人は、インフルエンザに罹患した場合の合併症のリスクが高いとされており、これらの因子を有する人を含めて、生後6か月以降で禁忌でない方すべてにワクチン接種が推奨されています。
・6か月以上5歳未満
・65歳以上
・慢性呼吸器疾患(気管支喘息やCOPDなど)
・心血管疾患(高血圧単独を除く)
・慢性腎・肝・血液・代謝(糖尿病など)疾患
・神経筋疾患(運動麻痺、痙攣、嚥下障害を含む)
・免疫抑制状態(HIVや薬剤によるものを含む)
・妊婦
・長期療養施設の入所者
・著しい肥満
・担がん患者

インフルエンザワクチン接種の時期
インフルエンザシーズンの時期と現行の不活化ワクチン効果の減弱を考慮すると、ワクチン接種は理想的には10月末までに行うことが推奨されています。わが国では、現時点で、COVID-19ワクチンとその他のワクチンとは、2週間あけて接種することになっています。なので、COVID-19ワクチンをまだ接種していない人には、まずそちらを優先せざるを得ないかと思われますが、並行してインフルエンザワクチンの接種もご検討いただきたいと考えます。
インフルエンザが最後に流行したのは2020年2月なので、それ以降出生した子どもはインフルエンザに対する抗体をほぼ持っていません。新型コロナ対策を徹底していることから、今冬もインフルエンザが流行しない可能性もありますが、感染症の専門家の多くは警戒しています。
COVID-19は、今年の秋以降も多くの新規患者が発生することが予想されます。そのような中で、ワクチンで予防できる疾患については可及的に接種を行い、医療機関への受診を抑制して医療現場の負担を軽減することも重要です。

当院でのインフルエンザワクチン接種について
当院では10月4日(月)からインフルエンザワクチン接種の予約受付を開始します
接種は10月21日(木)からとなります。13歳以上の方は1回の接種となります。ご希望の方は必ず電話で予約をお願いいたします。
コロナワクチンと重複しないよう、お気をつけください。