新型コロナウイルスの感染者数が劇的に減り、いよいよ色々な制限が解除されようとしています。東京や大阪では、認証を受けている飲食店に対する営業時間の短縮要請が解除されます。感染者数が減った要因の一つとされるのは、ワクチン接種です。
この図から見てもかなりワクチン接種が進んでいることが分かります。接種を完了した後に感染する「ブレークスルー感染」の可能性もあるため、感染対策を引き続きとる必要はありますが、現在の感染者数なら制限を解除するというのは自然な流れだと思います。感染症の専門家は、今後も、「ワクチンを過信せず、打っても自分が感染し、人にうつす可能性もあると考えながら、飲食も含めた行動をしてほしい」としています。例えば、
▽飲食物を口に運ぶとき以外はなるべくマスクを着用
▽はしやグラスなどは使い回さない
▽少人数で短時間を心がける
▽体調が悪いときは参加しない
などが挙げられています。
それでは第6波は来るのでしょうか?日本の新型コロナウイルス感染症は、全国的に5つの波が起こり、流行ごとに主役のウイルス株が入れ替わっています。
第4波はアルファ株が中心で、そのリバウンド(再燃)が起こりかけたところでデルタ株が急拡大し第5波を形成しました。では、この冬にやってくるかもしれない第6波は、どんな様相を呈するのでしょうか。今のところ、新たな株の流行の兆しは見られず、主役交代の可能性が見えないことから、デルタ株によるリバウンドが考えられます。海外でも見られたように、ワクチン未接種の人々の間でデルタ株が広がって流行の波を形成するというものです。先のグラフでも分かるように、若年層ほど接種率は低くなっており、こうした年代を中心にデルタ株のリバウンドが起こる可能性は十分にあり得ます。
では他の国はどうでしょう?日本より先にコロナが終息したとして経済活動が再開されているイギリスでは新型コロナウイルスの感染者が増えています。昨年冬よりも、現在の方が感染者が多いのですが、ワクチンが普及したおかげで、入院を必要とする重症者は昨年より少ないという状況です。それでも、イギリス全体の1日の感染者数は増加傾向にあり、最近では1日4万人を超えています。この感染の増加は何が原因なのでしょう。
イギリスでのある調査によると、ドイツ、フランス、スペインの人たちに比べて、マスクなどで顔を覆わないと答えたイギリス人は、はるかに多かったということです。実際、イギリス政府はマスクの着用を推奨はしていません。また、イギリスはワクチン接種を、他国に先行して大々的に進めましたが、ワクチン接種が他国より早かったからこそ、今になって免疫が低下しているのかもしれません。全人口におけるワクチン接種率でかつて世界一だったイスラエルでは、感染者急増はワクチンの効果低下によるものだと考えられたため、その後、高齢者に追加接種を行い、その結果、感染者数は再び減少しました。
これらから考えられるのは、いつ感染の再爆発が起きるかもしれないので、マスク着用等の感染対策は継続すること、3回目のブースト接種が感染を抑えこむことに有効である可能性があるということです。
追加接種はすぐにはできませんが、マスク着用はすぐに、しかも簡単にできます。ゼロインフルが今でも実現できていないように、ゼロコロナも不可能だと思います。それならば、自分たちでできることを続けながら、withコロナとして経済活動を再開するのが現実的な判断でしょうか。
今年はようやく忘年会ができると思っている方も多いと思います。今のままの感染状況なら、お店も感染対策をきちんと行い、自分たちも節度とルールを守りながらなら、経済活動も進められるように思います。ただ、インフルエンザと違い、抗コロナ用の薬はまだありませんから油断はしないようにしましょう。日本で感染対策と経済活動が両立できることを示したいものです。
当院でも、今後も院内の換気や検査での感染対策、また、来院される方の体温測定や手指消毒、マスク着用も続けていきます。