院長コラム

2022.02.07

オミクロン株とワクチン

新型コロナワクチンの3回目のブースター接種が埼玉県でもこの2月から始まります。現在、まん延するオミクロン株にはどれほどの効果があるのか気になるところだと思います。長崎大学などの研究チームの報告によると、今年1月1日~21日までに新型コロナウイルス感染症が疑われる症状で検査を受けた患者400例超を解析したところ、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの2回接種の発症予防効果は51.7%で、昨年の第5波に流行したデルタ型と比べ大幅に低下していたことがわかりました。

報告によると、16~64歳において、ファイザー製あるいはモデルナ製いずれかのワクチンの2回接種完了(2回接種後14日以上経過)による、未接種者と比較した発症予防における有効性は51.7%と推定されましたが、デルタ株が流行した際の同値は88.7%の有効性だったことに対して低下していると考えられるとしています。ただし、感染直前の抗体価を測定しているわけではないので、すでに2回接種から時間がたって抗体価が下がっていた可能性は高いと思われますし、本来ワクチンが感染予防より重症化予防に寄与すると言われていたことを考えると。これだけでオミクロン株に対してワクチンが意味がないと結論付けられないと思います。現在第6波真っ只中の大阪からの報告ですが、重症例27人の背景を見ると、ワクチン接種歴は9人が2回接種済みで、18人が接種歴なし(あるいは不明)、また、死亡した14人の背景は、ワクチン接種歴は6人が2回接種済みで、8人が接種歴なし(あるいは不明)だったとのことです。ワクチンの効果が低下していてもやはり打っていた方がましといえる状況だと思われます。

では現状を改善する方法としては、やはりブースター接種ということになるかと思います。このブースター接種の効果はというと日本ではまだ評価が出ていないので海外からの報告になりますが、イスラエルで年齢が50歳以上で3回目接種を受けたブースター接種群75万8,118例と非ブースター接種群8万5,090例で比較検討されたものです。死亡が主要評価項目とされ、ブースター接種群で65例(10万人あたり0.16人/日)、非ブースター接種群で137例(10万人あたり2.98人/日)という結果が示され、ブースター接種群では死亡率が90%低かった。65歳で区切った年齢や男女別でもブースター接種群がCOVID-19による死亡率が低かった。感染者もブースター接種群で2,888例、非ブースター接種群で1万1,108例であり、ブースター接種群で83%低かった。本研究からはブースター接種が死亡率の低下を示すという心強い結果と捉えることができる。

オミクロン株は重症化しにくいという海外からの報告通り、先の大阪からの報告でも、重症化率や致死率は、これまでの流行期に比べて低い水準にとどまっています。第6波の重症化率は、1月23日時点での集計によると、全年齢で0.05%(5万9353人中27人)であり、60歳代以上でも0.4%(5258人中20人)と、過去の流行期に比べて低いまま推移しています。直近の第5波と比べると、全年齢で20分の1、60歳代以上でも10分の1以下に過ぎません。また、第6波の致死率(新規陽性者数に占める死亡例の割合)は、1月23日時点で、全年齢が0.02%(5万9353人中14人)、60歳以上が0.20%(5258人中13人)と、こちらも過去の流行期に比べて低く、直近の第5波と比べても、全年齢、60歳代以上ともに20分の1にとどまっています。これらは従来のインフルエンザレベルと同じと考えてもよいと思われるレベルです。

それでは体力のある若い方や持病などのないリスクの低い方にはワクチンは不要か??ということになります。私自身の考えで言えば、今回のブースター接種も従来のインフルエンザの予防接種と同様に重症化リスクを下げたり、リスクの高い方にうつさないために接種する、そして、また異なる変異株が出てきて今度は重症化する率が高いなどという時のために備えておくために接種するという意味があるのではと考えています。新型コロナのどの株でも、インフルエンザでも重症化するリスクは、とにかく高齢者、そして基礎疾患のある方、 一部の妊娠後期の方です。 重症化のリスクとなる基礎疾患等には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、 心血管疾患、肥満、喫煙があります。ワクチンの副反応の長期的なリスクはまだ評価できていませんが、やはり、自分のため、身近な人のためにもワクチン接種は必要なものと考えます。当院のスタッフは私を含めて全員接種済みです。

諸外国や沖縄の例から見てもピークアウトは早いとされていますが、一刻も早く収束することを願います。