院長コラム

2018.01.25

今年のインフルエンザ

このコラムを書いているとき、外は大雪の状況です。また気温が下がり、空気が乾燥することでインフルエンザが流行する環境になるかも、と心配しています。

今年のインフルエンザで特徴的なのは例年より早くB型が流行していることです。皆さんの周りにもA型の方もB型の方もいると思いますが、例年ならA型の流行が最初にあって、その後にB型が流行する、という形でしたが、今年はA型もB型も同時に流行しています。B型がA型と大きく異なるのは、B型がインフルエンザの割に高熱などの症状が目立たないということです。そのため、インフルエンザにかかっていることに気づかず、感染を周囲に広げてしまうということです。たとえ微熱でも悪寒や筋肉痛、頭痛、倦怠感があった場合はインフルエンザかもしれないと考えぜひ医療機関を受診してください。

現在ではインフルエンザの検査キットがかなり優秀になってきましたが、それでも精度は100%ではありません。インフルエンザの迅速診断検査の精度を検討した研究では、市販されている迅速診断検査全体の特異度は98.2%と高いが、感度は62.3%という報告もあります。これは、「陽性と判定されたら本当に陽性である可能性は高いが、陰性と判定された人々の中には本当は陽性の患者がいる可能性が低くはない」ということです。そのため、検査結果が陰性でも、周囲で流行していて発熱と咳があり見た目が重ければインフルエンザと診断し治療することになります。

というのも、インフルエンザが発症してから48時間経つとインフルエンザ薬がきくタイミングを逃してしまうからです。現在のインフルエンザ薬にはウイルスを殺したり抑えたりする効果はなく、インフルエンザが増殖するのを抑えることを目的とするものです。

この薬がどれだけ効くかというと、健康成人では症状を1日程度短縮するというものです。たった1日と考えるか、高熱の辛い期間が1日でも短くなるならありがたいと思うかは難しいところです。ただし、子供や高齢者などの体力のない方や持病をお持ちの方は話が別です。二次性の肺炎にかかったり、その他の合併症を生じ全身状態の悪化を招く可能性もありますから、重症化を防ぐという意味では大変重要です。

結論としては、高熱などの典型的な症状がなくてもインフルエンザの可能性もあるので何か変だと思ったら医療機関を受診してください。自分のためだけでなく、家族などの周りの方のためでもあります。

まだインフルエンザの流行時期は続くので、人ごみに出かける際には、マスクの着用や手洗い、うがいをお忘れなく。本当はワクチンを打つのが一番の予防ですが、今年はワクチン不足の問題がありましたし、かといって今からでは時期を逃した感が強いです。ちなみにワクチンの有効率は平均で50-60%です。

2017.12.07

日本人のピロリ菌の感染率

ピロリ菌は十二指腸潰瘍や胃潰瘍の主な原因であり、また、WHOからも胃がんの原因と言われているものです。日本ではもともとピロリ菌の感染率が高く、また、東アジアのピロリ菌は悪性度が高いため、日本では胃がんが多かったと考えられています。最近では、胃がんの死亡率が低下していますが、これは環境の改善に伴いピロリ菌の感染率が低下していることが大きな要因と言われています。

先日、愛知医科大学が分析した日本人のピロリ菌感染率が報告されました。

1998年以降に生まれた人の感染率は10%以下ということでした。以前は井戸水のような環境からの感染だったための感染が考えられているので、年代が若くなるにつれ感染率が下がっているのは当然かと思います。ただ0%でないのは母親からの口移しが感染経路となっていると考えられています。そのため、お若い方でもご自身のお母様にピロリ菌感染が見られた場合は検査をおすすめいたします。逆にご自身がピロリ菌に感染していた場合、ご自身のお母様のピロリ菌感染を調べておいた方が良いと思います。内視鏡検査に抵抗がある方は血液でピロリ菌感染を調べることもできますのでご相談ください。

ピロリ除菌の目的は、胃・十二指腸潰瘍の再発予防や胃癌発症の抑制のため、高齢者では除菌の意味がないとお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、そんなことはありません。高齢者の方にとっては、これらに加えて薬剤による上部消化管出血の予防があります。高齢者で服用が増える腰痛やひざ痛の鎮痛薬だけでなく、心筋梗塞や脳卒中を起こした後に服用することが多い抗血小板薬、抗凝固薬(いわゆる血液をサラサラにする薬)も上部消化管出血のリスクを上昇させます。

従来、ピロリ菌が長期間感染している高齢者では、ピロリ菌除菌を行っても、それまでの長年の炎症が影響し、胃粘膜の改善は難しいと考えられてきました。しかし、高齢者でも除菌することで、粘膜の状態が改善し、出血しにくくなることが分かりました。また、高齢者への除菌療法も、除菌成功率や安全性では、若年者と大きな差は見られないと報告されています。そのため、年齢にかかわらず除菌にはメリットがあると思われます。

ピロリ菌感染が心配な方、今まで検査を受けていない方、ご家族にピロリ菌感染がいた方はぜひ検査を受けましょう。そして、ピロリ菌感染が分かった方は除菌しましょう。新しい胃薬が出たため、除菌成功率も上がっています。

2017.11.28

飲酒とガン

これから忘年会などの飲酒の機会が増えることと思います。寒くなってきたし、温かいおでんや鍋物と飲むビールは美味しいですよね。でも、そういえばこの前の健診で肝機能が引っかかって飲み過ぎないように言われている、という人も多いと思います。今までも適度の飲酒は健康にもいいと言われてきました。その主な理由としては、ストレスを和らげたり、食欲増進効果が見られる、などというものでした。ただ、当然飲みすぎれば健康を害することは皆さんご存知のとおりです。

肝臓に負担をかけることは当然として、メタボリックシンドロームに関わる高血圧・高コレステロール血症・糖尿病には、お酒の飲みすぎが関与している場合が多数見られます。とても痛い痛風発作を引き起こす原因にもなります。そして先日、米国臨床腫瘍学会(ASCO)はアルコール摂取は、中咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肝細胞がん、乳がん、結腸がんの原因として関連、また、膵臓がんおよび胃がんを含むその他のがんのリスク因子である可能性があり、全体として、世界における新規のがん発症およびがんによる死亡の5~6%がアルコールに直接起因する、と発表しました。「控えめな飲酒量であってもがんリスクが増加する可能性があるが、最も大きなリスクが認められたのは長期の大量飲酒であった」ということです。

要はタバコほど健康に悪いということではないので、禁煙と同じレベルで厳格に禁酒を勧めるわけではないが、“がんのリスクを減らしたいならば飲酒量を減らし、そして飲酒していないならば、飲酒を開始してはならない”というものです。結局はアルコールもガンのリスクになりますよ、だから飲み過ぎないほうがいいですよ、飲酒量を控えることはガンの予防につながりますよ、ということです。以前から言われていたような・・・??

ちなみに適度な飲酒とはどれくらいか御存知でしょうか?厚労省が推進する「健康日本21」によると1日平均純アルコールにして約20g程度であるとされています。とはいえ、お酒に弱い人、女性や高齢者であれば、この基準よりも少なめを適量と考えるべきでしょう。純アルコール(g)=〔飲酒量(mL) ×アルコール濃度 ÷100× 0.8〕です。

私自身もお酒は好きなので、言い訳を探すと、デンマークで糖尿病リスクの最も低い飲酒パターンは、男性は週14ドリンク、女性は週9ドリンクで、非飲酒者に比べて40-50%の糖尿病のリスクが低下したとの報告がありました(1ドリンク=純アルコール10g)。日本人は違うかもしれませんね・・・。

要は、一日の酒量を抑え目に、そして、休肝日を作ることが長くお酒を楽しめることになるのではないかと思います。

2017.10.27

朝食は王様のように、昼食は王子のように、夕食は貧民のように食べよ

先日、朝食を抜くことが無症候性アテローム性動脈硬化症リスクの約75%増加した一方、全身性アテローム性動脈硬化症リスクについては2倍超となるという海外の報告がありました。日本でも朝食を食べない習慣の人は、食べる習慣の人よりも、男性の循環器疾患による死亡リスクと全死亡リスク、女性の全死亡リスクが有意に上昇することが報告されています。男性の循環器疾患による死亡リスクは1.42倍、全死亡リスクが1.43倍、女性の全死亡リスクは1.34倍とのことでした。

朝食を抜くことですぐに思い浮かぶのは、肥満との関係です。今までも若年者の朝食の欠食と肥満の関係はよく言われてきたことですが、実は高齢者においてもやはり肥満との関係があるようです。最近の国内の報告で、朝食欠食者は朝食摂取者より2.23倍肥満の確率が高かったことが示されました。朝食をとらない高齢者は食事の質も悪く、身体的活動も低かったとのことです。

結局は朝食をしっかり食べることが、しっかり活動すること、そして健康につながるということではないでしょうか?

また、朝食をとらない人は食物繊維の摂取量が少なかったそうです。食物繊維をとることが健康には非常に重要なことは皆さんご存知のとおりですが、なかなか思うように摂取できないことも多いかと思います。そこで朝食に全粒穀物をとるのはいかがでしょうか。たとえば、玄米や雑穀米、全粒粉のパンやシリアルなどです。全粒穀物の摂取は、心血管疾患、がん、呼吸器疾患・感染症・糖尿病・非心血管疾患や死亡リスクの低下と関連していることが報告されています。大腸がんに有効であることはよく言われており、1日3食とも全粒粉にした人の大腸がん発生の相対リスクは、おおよそ0.83倍でした。

全粒穀物や果物を含めた、食物繊維の多い健康的な朝食をとることが肥満を防ぎ、病気を防ぐことにつながります。もちろん、便秘にも有効なことは間違いありません。タイトルの格言は海外のものではありますが、いかに朝食が重要なものかをよく示していると思います。

2017.10.04

便秘対策グッズ

10/1の夕方の番組で面白いものを見ました。アイリスオーヤマが販売している「トイレスムーズ」というものです。今まで便秘の方に排便中の姿勢を指導する際に、足の下に何か台を置いて足の位置を高くすることをお勧めしてきました。とは言っても何をどのくらい置くかというところに困っていました。ところがこの商品は、その台の役割をするものなのです。これぞ今まで探し求めていたものという感じでした。その台に両足を乗せると洋式トイレに座っていながら和式トイレの際の姿勢になるので、排便が促されるちうものです。5000円くらいするようですが、便秘で困っている方には十分に元が取れるものだと思われます。テレビでは座っていると便が出そうになると言っていましたが、実際には便が直腸に降りてきていない時には排便は促されないとは思いますが。ちなみに、排便のシステムは、最初にS状結腸から直腸に便が降りてくることで便意が誘発されることから始まります。そこでトイレに行って座るわけですが、いつもは失禁を予防している、直腸の下部を筋肉が便を抑えています。腹圧をかけて、この筋肉が緩むと最終的に排便となるわけです。このときに和式トイレの姿勢をここでうまく排便できないとると骨盤の姿勢から自然とこの筋肉が緩むため排便しやすくなるということです。私はありがたいことに便秘ではありませんが、是非一度使ってみたいと思います。

2017.09.28

今年もインフルエンザの季節が近づいてきました。

「10月からインフルエンザの予防接種が始まります。

当院では10/10から予防接種を開始いたします(料金はHPを参照してください)。

インフルエンザの予防接種

9月上旬にさいたま市の小学校でインフルエンザによる学級閉鎖があったことはご存知でしょうか?欠席者14人のうち9人がA型インフルエンザでした。その後、感染は収束したようですが、気をつけるに越したことはありません。今後の気温・湿度の低下に伴いウイルス感染のリスクが高くなるのはご存知のとおりです。予防接種ももちろん大事ですが、やはり手洗い・うがいが重要なことは間違いありません。その予防接種ですが最近のデータでは接種率が低下しているそうです。最も最近のデータで41.5%の接種率で、その前シーズンから4.3%も低下しています。接種しても、どうせかかるからという理由で接種しない方もいらっしゃると思いますが、少しでも感染リスクを下げることは重要です。インフルエンザにかかりやすい方は2回接種という方法もあるのでぜひご相談ください。

2017.09.21

「糖尿病」と「がん」

現在、特定健診が行われていますが、皆さんは受けられましたか?また人間ドックなどを受けられた方もいらっしゃると思いますが、結果は確認されていますか?糖尿病のところに「要受診」「要治療」の指摘はされていないでしょうか?今では国民の男性の約4人に1人、女性の約5人に1人が糖尿病もしくはその予備軍と言われていますが、糖尿病は失明や腎不全の原因となり、また、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めることはご存知かと思いますが、近年では、糖尿病とがんの関連性が問題になっています。糖尿病により、がんになる総リスクは20-30%増加し、2型糖尿病患者では、罹病期間が長いほどがんの発症率が高くなり、罹病15年以上の患者は、15年未満の患者に対して、男性で1.6倍、女性で1.8倍になるとの報告もあります。下の図には最近報告された、2型糖尿病の人ががんで上昇する死亡リスクをグラフにしたものです。糖尿病でない人と比べて、糖尿病の人が胃がんで死亡する確率は1.84倍、大腸がんなら1.41倍といったものです。



糖尿病ががんのリスクを増加させる原因としては、肥満の合併、血糖を処理するホルモンであるインスリンが効きにくくなることにより引き起こされる高インスリン血症やIGF-1というホルモンの上昇、慢性炎症(炎症性サイトカインの増加)あるいは、高血糖自体の関与の可能性が指摘されています。実際、肥満や運動不足、食習慣(高カロリー、高脂肪、低繊維)、アルコール多飲、社会経済活動などは、糖尿病とがんに共通するリスクファクターであり、糖尿病を予防するための行動が死亡率やがん発症率を低下させることがわかっています。

健診で異常を指摘された方の約4割の方が受診されないとのデータがあります。お手元の健診結果をもう一度見直していただき、血糖、HbA1cの異常を指摘されている方は、糖尿病の治療を受けることはもちろん、がんの予防・早期発見のために、定期的にがん検診を受けることもご検討ください。

2017.08.11

筋肉が溶ける・・・?

最近は週刊誌で「飲んではいけない薬」「やってはいけない手術」というようなタイトルをよく目にするようになりました。私も気になって目を通したりしますが、印象としては「確かにそういうこともあるけれど・・・」という感じです。「~してはいけない」とか「こういう医者に殺される」などとショッキングな文言を並べることで読者の目を引きたいのでしょうが、ことさら物事の負の一面だけをクローズアップしているものが多いように思えます。

たとえば、コレステロールを下げる薬としてよく用いられるスタチンという系統の薬がありますが、この薬には、筋肉細胞が溶ける横紋筋融解症という副作用があります。よく「筋肉が溶ける」と書かれており、内服している人はびっくりすると思います。確かにいったん発症すれば重篤なものですが、そもそも発症する確率は2万人に1人というもので、めったに起こらないものです。それよりもこの薬を内服することで動脈硬化の進行を防ぎ、心筋梗塞や狭心症を防ぐという恩恵にあずかる人の方がずっと多いことが分かっています。薬というものは必ず効果と副作用があるので、内服することのメリットとデメリットを理解した上で飲むべきだと思います。

現在行われている特定健診でも、コレステロールの異常を指摘される人も多いと思いますが、ガイドラインに従えば、その人によって、コレステロールの目標値は異なるので、異常値が出た人がすべてスタチンを内服しなければいけないということはありません。心筋梗塞の既往のある人の悪玉コレステロールの目標値は100mg/dL未満ですが、高血圧・糖尿病・喫煙のリスクが無いような最も心筋梗塞のリスクが低い人の目標値は160mg/dL未満です。また、閉経前の女性は心筋梗塞のリスクが低いことも分かっているので、それらを考慮した上で内服するかどうかを決めるのが良いと思われるので、特定健診を受けて終わりにしないで、きちんとその評価を医師と共にするべきだと思います。もちろん、内服する市内に関わらず、生活習慣の改善が最も大事なことは間違いありません。



最後に週刊誌などに惑わされないようにするために、以下のような特徴がある記事はよくよく吟味して読んでください。



1.くすりや治療の副作用や合併症などのデメリットばかり伝え、メリットについては伝えない

2.まれな重大な副作用でも、その確率を示さず、いつも起きるかのように伝える

3.大規模な研究に基づく論文や多くの医師が参考にする診療ガイドラインではなく、限られた医師の意見や患者の体験談を根拠にしている

4.文言が過激で断定的

2017.07.06

家庭血圧の測定方法

健康管理のため自宅で血圧を測定されている方は多いかと思います。その家庭での血圧測定は誤差が多いという研究結果がカナダでから発表されました。その発表によると家庭血圧計による測定値の69%で5mmHg以上の誤差があり、10mmHg以上の誤差も29%で認められたとのことです。

現在の高血圧治療ガイドラインでは「診察室血圧と家庭血圧の間に差がある場合、家庭血圧による診断を優先する」となっているので、あまり差があるのは好ましくありません。病院で測ると家での血圧より高くなるという人の中には医師や看護師を見ると緊張して血圧が高くなるという「白衣高血圧」の方もいるかと思いますが、大事なのは「正しく血圧を測ること」です。家庭で血圧を正しく測るためには以下のことに注意してください。

【朝の場合】
〇起床後1時間以内
〇排尿後
〇薬を飲む前
〇朝食前
〇血圧計の前に座って1~2分後

 

【夜の場合】
〇寝る前
〇入浴や飲酒の直後は避ける
〇血圧計の前に座って1~2分後
測定時に気をつけることは
●カフは心臓の位置に合わせます。

カフの位置が心臓より上だと血圧が低く、下だと血圧が高く測定されてしまいます。特に手首式の器械の時は中止してください。
●カフは指1本が入る位のキツさで巻きます。

カフの巻き方がきついと血圧は低く、ゆるいと高く測定されます。
●薄手のシャツまたはTシャツで測ります。

上着の袖をたくしあげると腕を圧迫して正確に測ることができません。
●測定は原則2回で、その平均値を記録する

初回の測定値は2回目以降よりも高いことが一般的です。1回のみの測定の場合には、1回のみの血圧値を、3回測定した場合には3回の平均を用いることもOKです。



血圧を測る場合には、「毎日決まった時間に、決まった条件で、正しい測り方で」測りましょう。

私が患者さんに聞かれた時には、「朝食を食べる前に食卓に着いた時に、深呼吸をしてから血圧を測り、記録してから食べましょう」と答えています。


(※大日本住友製薬ホームページより)

2017.06.07

メタボ健診

6月1日に全国の市町村が主体となって「特定健康診査」が始まりました。当院でも白岡市をはじめ、久喜市・蓮田市・宮代町の対象の方に健診を行っています。これは「特定健診」「メタボ健診」とも言われているもので、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病を重症化させるメタボリック症候群を早く見つけて早く対処することを促すことを目的としたものです。

メタボリック症候群の原因は、ご存知の通り肥満、特に内臓に脂肪が蓄積した「内臓脂肪型肥満」です。メタボリック症候群を脱するにはやはり肥満と戦う必要があります。 肥満の原因の一つに睡眠不足があるのをご存知でしょうか? これまでの疫学研究で、慢性的な睡眠不足が肥満をもたらすことがわかっていましたが、その詳細な機序は分かっていませんでした。先日、睡眠時間を大幅に制限すると、食欲抑制にはたらくホルモンが減少し、空腹感が増すなど食欲に影響を及ぼし、その結果、肥満リスクが増加するという発表がありました。実験では、睡眠時間を7時間から半分に制限すると、食欲抑制作用をもつペプチドホルモンであるペプチドYY(PYY)の分泌が有意に低下したほか、1時間ごとに質問票で評価した空腹感が増すなど、食欲に影響を及ぼすことも明らかになりました。

ちなみに、起きている分のカロリー消費量は増えますが、1日全体でのカロリー消費量は変わらないそうです。つまり、寝不足で疲れているから体が栄養を欲しているというわけではないようです。十分な睡眠をとることが心身の疲れを取り、肥満を防ぐことにもつながるということですね。蛇足ですが、寝過ぎは男性の糖尿病リスクを高める、という研究結果もありますので何事も“過ぎたるは猶及ばざるが如し”です。

1 2 3 4 5 6 7 8 9