院長コラム

2017.05.12

胃アニサキス

最近、新聞の記事でアニサキスによる食中毒が急増しているということを目にしました。アニサキスとは通常魚介類に棲みついている寄生虫のことですが、そのアニサキスの幼虫が寄生している魚などを食べることでヒトが感染し、腹痛などの症状が起きます。アニサキスが人のどの内臓で悪さをするかで症状が異なりますが、ほとんどはアニサキスの幼虫が胃で症状を起こす”胃アニサキス症”になることがほとんどです。

サバ、アジ、イワシ、イカ、サンマなどが感染源になることが多いですがサバが一番多いようです。これらの魚介類の生食後数時間して,激しい上腹部痛,悪心,嘔吐をもって発症するのが胃アニサキス症の特徴です。これはかなり痛いです。なぜ分かるかというと、実は私も一度アニサキスには痛い思いをしました。自分の場合はイカの刺身でしたが、食後8時間後くらいから痛み出しました。その頃はまだ駆け出しの医師だったので、先輩の医師に内視鏡をしてもらいました。自分の胃の粘膜に噛み付いているアニサキスを見るのはかなり衝撃的でした。すぐに道具でつまんで除去してもらいましたが、摘出したアニサキスは2-3cmの糸状の細くて小さいものでした。こんな小さいものがこれほどの痛みの原因になるのかと不思議に思ったものです。時が経って、今では自分が治療する立場になっていますが、海の無い埼玉でも油断できません。

この1年で当院でも2例アニサキスを除去しています。どこでも新鮮な魚介類が食べられるようになった弊害といえるかもしれません。海産魚介類の生食を避けること,あるいは加熱後に食べること(60℃で1分以上)が,確実な感染予防の方法ですが、やはり刺身を食べたいですよね。ちなみに、醤油、わさび、酢がアニサキス症の予防に有効ではないかと期待されていましたが、料理で使う程度の量や濃度,処理の時間では虫体は死にません。シメサバでの報告も多いです。治療法としては、胃アニサキス症では胃内視鏡で胃粘膜に穿入する虫体を見つけ、これを鉗子で摘出することになります。これも鼻からの細い内視鏡でできるようになったため、以前よりは楽に受けられるようになりました。ちなみに、私は今でもイカの刺身やシメサバは大好きです。

2017.04.26

肺炎球菌ワクチン

平成26年10月1日から、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳および100歳の方を対象に、肺炎球菌ワクチンが定期接種となりました。今年も接種が始まっており対象の方は以下の方です。



65歳 昭和27年4月2日~昭和28年4月1日生まれ

70歳 昭和22年4月2日~昭和23年4月1日生まれ

75歳 昭和17年4月2日~昭和18年4月1日生まれ

80歳 昭和12年4月2日~昭和13年4月1日生まれ

85歳 昭和 7年4月2日~昭和 8年4月1日生まれ

90歳 昭和 2年4月2日~昭和 3年4月1日生まれ

95歳 大正11年4月2日~大正12年4月1日生まれ

100歳 大正 6年4月2日~大正 7年4月1日生まれ



対象の方には各自治体が通知が届いているかと思いますので、それで気づいている方も多いかと思います。



現在日本では肺炎が死因の第3位であり、中でも肺炎球菌が原因菌の約1/4を占めます。ワクチンの接種で肺炎がすべて予防されるわけではありませんが、外出後の手洗いやうがい、禁煙などの生活習慣に加えて予防接種を行うことでさらに肺炎のリスクが下がると思われます。



以前、肺炎球菌ワクチンは任意接種でしたので、希望者が自費で行っていました。現在では定期接種の対象の方には、公費の助成があり、接種しやすくなりましたが地域によって金額に差があります。当院のある白岡市や近隣の久喜市・宮代町・蓮田市では自己負担金が3000円で接種できますが、加須市・幸手市は5000円です。白岡市の方は電話で予約の上、通知はがきを持参してください。当院で予診票をお渡しいたします。白岡市以外の方はお住まいの地域の保健センター等に連絡し予診票をもらってください。それを持参して電話予約の上、当院にお越しください。



また、対象でない方も肺炎球菌ワクチンの接種は可能です。以前接種した方も5年以上経つとワクチンの効果が低下することが示唆されているため追加接種が可能です。



ただし、その場合は残念ながら自費になってしまいます。



以前にご自身でワクチンを接種した方もいらっしゃるかと思いますので、ご不明な点があればご相談ください。



また、肺炎に関しては以下のページがわかりやすいかと思います。


2017.04.10

シンポニー

今度”潰瘍性大腸炎”の治療薬として使用できる薬が増えることになりました。「シンポニー」という注射薬です。潰瘍性大腸炎は現在の日本の総理大臣でもある安倍首相が患っていることでも知られる難病ですが、患者さんは増加傾向で現在は16万人以上いるといわれています。そういう病気なので治療の選択肢が増えることは、患者さんにとっても、我々消化器を診る医師にとってもありがたいことです。

潰瘍性大腸炎の症状としては慢性的な下痢や血便、腹痛などがありますが、当初は症状からだけでは診断がつきにくいこともあります。特に、ストレスが引き金になって起きる”過敏性腸症候群”と区別がつきにくいこともあり、実際に長く過敏性腸症候群と診断されてきましたが、あらためて大腸内視鏡検査を受けてみて初めて潰瘍性大腸炎と診断がつく方もいらっしゃいます。今の時期は就職や進学など大きく環境が変わったせいでお腹の調子が思わしくない方も多いかと思います。単なる下痢と思わず、症状が続く方は一度消化器の専門医に相談することをお勧めします。きちんと診断することが正しい治療にも繋がります。

2017.03.03

ストレスと胃腸障害

3月、4月は卒業や入学、就職、転勤、転居など人生にとって重要なイベントが起きる季節ですね。そのようなタイミングで胃や腸の不調を訴える方が多く医療機関を受診されます。症状にあわせて内視鏡などの検査を行うのですが、異常を認められないことも多くあります。このような明らかな異常がないのに消化器症状が現れる病気が「機能性胃腸障害」といわれるものです。

「胃が痛い」「胃がムカムカする」「お腹が張る」「食事をするとすぐに満腹になる」などの症状があるのに胃カメラや腹部エコーを行っても異常がみられないのものを”機能性ディスペプシア”といいます。また、「便秘・下痢の排便異常」「腹痛やおなかの不快感」が続くのに大腸内視鏡や腹部CTなどの検査では異常が認められないものを”過敏性腸症候群”といいます。ともにストレスが大きく関与しているといわれており、治療としては対症療法が主となります。

数種類の内服薬があるので、患者さんの症状にあわせて何種類かの薬を組み合わせて処方するのですが、その方にぴったり合う処方を探すのに時間がかかることもありますが、患者さんと主治医とで根気強く治療に当たることが大事だと思います。近日、過敏性腸症候群の「便秘型」に対する新薬が発売されます。医学も日々進歩していますので、思い当たる症状がある方はぜひ相談してください。ただ、自分で「機能性胃腸障害」と思い込むと本来の病気の診断が遅れることもありますから、きちんと検査を受けて、重大な病気がないことを確認することが大事です。

2017.02.01

「乾燥性皮膚炎」と「肛門のかゆみ」

この季節は乾燥が色々な問題を起こしますが、乾燥性皮膚炎(皮脂欠乏性湿疹)もそのひとつです。この季節は誰でも皮膚が乾燥しますが、加齢とともに皮脂の欠乏も進むため、高齢の方ほどかゆみなどの症状に困ることになります。このかゆみへの対策として1月10日米国皮膚科学会(AAD)が11のヒントを紹介しました。



【かゆみを軽減する5つのヒント】

 ・冷湿布や氷嚢を、痒みのある部位に5-10分または痒みが引くまで当てる

 ・水痘や帯状疱疹、漆かぶれ、日焼けなど 、水疱形成や滲出がある場合は、オートミールを加えた湯で入浴する

 ・保湿する。保湿剤は添加物や香料を含まないものを選ぶ

 ・局所麻酔薬(pramoxine含有製剤)を塗る

 ・メンソールやカラミンなどの冷却剤を塗る。保湿剤を冷蔵庫で冷やすと、冷却効果が高まる

【かゆみ予防の6つのヒント】

 ・入浴やシャワーにはぬるめの湯を使い、時間は10分以内にする

 ・刺激を最少にするため、せっけんやローションは無香料のものを使う。「無香料」と表示していても、刺激になる化学物質を含んでいることがあるので注意

 ・薬剤の使用は皮膚科医の指示に従う。薬剤を塗ってから、全体の皮膚に保湿剤を塗る

 ・衣服は木綿製で身体を締めつけない ものを選ぶ

 ・極端な気温の変化を避ける。家の中では、比較的涼しく適度な湿度のある環境を保つ。冬季に皮膚の乾燥や乾癬を起こしやすい人は、加湿器を使うとよい

 ・痒みはストレスで増悪するので、ストレスを避ける



といったものですが、簡単に言うと「保湿すること」「皮膚への刺激を少なくすること」「適切な薬剤を用いること」ということです。ただ、かゆみの原因が肝臓の病気などのこともありますのでかゆみが続く場合は相談していただければと思います。

当院では「肛門科」を標榜していることから、「肛門のかゆみ」を訴えて受診される方も多いです。このかゆみに対しても先に書いたヒントは通じるものがあります。当院で指導しているのは

1.絶対に掻かない

2.シャワートイレの水の勢いを強くしない

3.強く拭きすぎない

4.入浴時も洗い過ぎない。洗うときはシャワーで洗い流す程度にするか、洗剤を使うにしても刺激性の少ないものを手であわ立ててそのまま手でやさしく洗う



ということです。肛門は「皮膚」と「粘膜」という要素を持っているので、皮膚よりデリケートです。だから、かゆいからといって乱暴にかかないことはとても大事です。かいてしまうと皮膚のバリアーが壊れてますますかゆみが強くなったり、感染のきっかけになったりすることもあります。そのため、かゆみが強い場合や、寝ている時に無意識にかいてしまう場合などはかゆみ止めの内服を処方する場合もあります。ま た、かゆみの原因を調べることも重要です。痔ろうや便失禁などが背景にあることもあります。そういった場合は軟膏だけでは治りません。あとは診断に合わせて適切な外用薬を使うことになります。

以前はぎょう虫などの寄生虫によるものもありましたが、現在では激減しており、学校健診からも2015年度限りで廃止されています。

皮膚にしても肛門にしてもかゆみはかなりつらい症状なので、かゆみが続く場合はご相談ください。

2017.01.25

花粉症について

先日当クリニックも開業2年目を迎えましたが、今までで患者様によく言われたことがあります。それは「消化器内科だから風邪とか高血圧は診てもらえませんか?」というものです。当クリニックは内視鏡検査を主とした消化器内科を得意としていますが、「普通の風邪」も診ますし、「高血圧」「糖尿病」といった生活習慣病も対応しています。色々なご相談に対応できる「かかりつけ医」を目指していますので、お困りのことがあれば声をかけていただければと思います。

この頃はインフルエンザに代表されるウイルス性疾患が流行しており、鼻水やのどの違和感でお困りの方は「風邪かな?」と思われることでしょう。もちろん、今はそうであることが多いのですが、もうすぐもう1つの「困った相手」が出現します。そう、花粉です。今年の花粉の飛散量は東京では昨年よりもやや多く、埼玉・群馬・栃木では昨年より少ないと予想されています。私も花粉症なので今からびくびくしています。飛散開始時期は例年通りと言われていますが、1~2月の気温も影響しており、この時期の気温が高いと時期が早まると言われています。去年までは花粉症じゃなかったのに今年から突然発症することもありますから、風邪と思い込まないようにしてください。1週間以上水っぱなが続く場合は、花粉症の可能性が高いので、悩ましいときは相談してください。軽症の場合はマスクだけでも対応できることもありますが、薬がよく効く疾患ですし、内服だけでなく点鼻薬や点眼薬もありますので、それぞれの症状に合わせた処方が可能です。

2017.01.04

新年のご挨拶

謹んで新春のお慶びを申し上げます。

皆様にとって良き一年でありますよう心よりお祈り申し上げます。



当クリニックも開院してから2回目のお正月を迎えました。昨年の正月はこれから1年どうなるのか不安ばかりでしたが、終わってみると、少しずつ地域の皆様に当クリニックを知っていただくことができたように思います。内視鏡検査も白岡市や久喜市だけでなく、宮代町、杉戸町、幸手市、加須市や蓮田市、さいたま市などからも来ていただけました。群馬や東京からわざわざ来ていただいた方もいらっしゃいました。これは、皆さまが少しでも苦痛を少なく検査を受けたいということのあらわれだと思います。今後も少しでも楽に検査を受けられることで、次回の検査に対する気持ちのハードルが下げられるようにできたら、と考えております。

また、皆さまからいただいた質問の中でも多かったのが、「風邪も診てもらえますか?」や「高血圧や糖尿病も診てもらえますか?」といったものでした。もしかしたら当クリニックの「消化器内科」という名前が消化器しか受け付けないという印象を与えているのかもしれません。当クリニックでは確かに消化器を専門としておりますが、常に目指しているのは皆さまのかかりつけ医です。風邪やインフルエンザももちろんのこと、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理もご相談いただければと思います。「こんなことを聞いても大丈夫かな・・・」といったことでも、尋ねていただければ、できる限りお答えするつもりです。もちろん、当クリニックで対応できない場合は、他院への紹介なども致します。

今年も皆さまの健康に貢献できるよう、スタッフともどもさらに頑張ってまいりたいと思います。本年もよろしくお願いいたします。

2016.12.26

年末のご挨拶

寒さがますます厳しくなってきましたが皆様の体調はいかがでしょうか?インフルエンザやノロなどウイルス感染が猛威を振るっています。これらの感染対策にはなんといっても手洗いとうがいです。外出後や食事の前には必ず手洗い・うがいを行いましょう。

さて、12月3日は当クリニックの誕生日でした。皆様やスタッフのおかげで、何とか大過なくこの1年を送ることができました。本当にありがとうございました。私にすればあっという間の一年でしたが、 先日「病院まちねっと」から取材を受けました際に開業時に自分が思ったことなどを思い起こす機会がありました。今後とも初心を忘れずに、皆様に信頼されるクリニックに慣れるよう頑張っていきたいと思います。もし、お時間があれば下のサイトに立ち寄ってみてください。トップページのバナーからも見ることができます。



http://www.byoin-machi.net/saitama/2/b22/11246/091501.html



当クリニックは12/29(木)の午前中まで診療を行っておりますが、先に皆様にはご挨拶をさせていただきます。今年一年お世話になりありがとうございました。皆様が良いお年を迎えられますようにお祈りいたします。

新年はは1/5(木)から通常診療を行います。来年もよろしくお願いいたします。

2016.11.15

肥満について

駐車場の変更に伴い、皆様にはご迷惑をおかけしているかも知れません。何か気がつくことがあれば当院スタッフもしくは隣の薬局のスタッフにお声かけください。ところで、車は大変便利なものですが、それに頼り過ぎるのはよくありません。皆さんも分かってはいるとは思いますが、寒くなって来たこともあり、ついつい近場でも車を利用してしまうこともあるこもしれません。健康診断の結果からも歩くように指導されていたのに・・・と言う感じでしょうか?しかしながら、歩行は肥満対策にもとても有効です。

先日、アメリカで発表された研究結果に、BMI高値、腹囲の増加、および2型糖尿病が肝臓癌リスクの上昇と関連する、というものがありました。解析の結果、BMIが5kg/m2上昇するごとの肝臓癌リスクは男性で38%、女性で25%上昇し、腹囲が5cm増加するごとに8%上昇したとのことです。簡単に言うと太れば太るほど肝臓癌のリスクが上昇すると言うものです。また、2型糖尿病を持つ患者さんは肝臓癌リスクが2.61倍高かったそうです。

肝臓癌の最大の原因であるB型肝炎やC型肝炎が薬で治せるようになってきていることを考えると、結局は肥満が肝臓癌の最大のリスク要因になっていくのかもしれません。

寒さにも負けずウオーキングを続けている方も多いと思いますが、朝の寒い時間に外に出る際は保温に気をつけてください。

2016.11.01

大腸がんの予防について

先日のNHKの「ガッテン!」という番組で大腸がんの特集をしていました。結論から言うと、大腸ポリープを切除することで大腸がんは予防できるということでした。この意見には私も大いに賛成です。大腸がんは予防ができるがんだと考えていますし、実際にアメリカでも大腸内視鏡を行うことで大腸がんが激減しているという事実もあります。そのアメリカで大腸内視鏡検査を受けたくない理由が出ている記事をみかけました。



それは、

1.検査がつらいと聞いている

2.癌の家族歴がなければリスクは低く、 検診を受ける必要がないと思っている

3.検診が必要なのは、症状がある人だけだと思っている

4.検査費用が心配

5.検診のために仕事を休まなければならない、自宅から離れた施設に行かなければならない

というものでした。



概して日本ではアメリカに比べ検査の費用も高くありませんし、便潜血で陽性ならば保険で大腸内視鏡検査を受けることができます。また、当院では最新の機器を使うことで患者さんの体の負担を減らしたり、不安の強い方や以前検査を受けたときに痛みが強かった方には鎮静剤を用いての検査も行っていますので、「つらくない検査」を受けられると考えています。また、ポリープがあった際もその場で切除し日帰りできることがほとんどですので費用的な負担も少ないかと思います。「検査を受けた方がよいことは分かっているけれど・・・」と悩んでいるという方は一度ご相談ください。

1 3 4 5 6 7 8 9